欧州特許庁でもドイツ特許庁でも出願の公開後は第三者が情報提供により出願に係る発明の特許性に関して意見を述べることができます。しかし情報提供の内容を参酌するか否かは審査官の裁量によるので、情報提供したももの審査官に無視されしまい、結局はそのまま特許になってしまったということもあります。

そこで今回は情報提供の内容を審査官に参酌してもらう可能性を上げるためにできることを紹介したいと思います。


1.なるべく審査の序盤に情報提供をする

審査も終盤になると審査官の心証形成も終了しています。審査の終盤で情報提供がされても今更審査の方針を変えたくないというのが審査官の本音になると思います。したがって情報提供の内容を参酌してもらうためにはまだ審査官の心証形成がなされていない審査の序盤に情報提供をすることが好ましいです。

一方で公開直後のようにまだ審査が開始しておらず、出願人による権利化の方針が固まっていない時点で情報提供をしてしまっては、情報提供が無駄になってしまったり、出願人を不必要に刺激してしまう恐れがあるので好ましくありません。

このため情報提供の時期としては、第1OA(欧州特許庁では欧州調査報告)に対する出願人の対応後であって第2OAの発行前のできるだけ早い時期をお勧めしています。


2.新たな文献で新規性を攻撃する

私の経験上、情報提供で参酌される可能性が最も高いのはこれまでの審査過程で引用されてこなかった新たな文献で新規性を攻撃する場合です。したがって情報提供をする際には新規性を否定しうる新たな文献を準備することをお勧めしています。

一方で、記載不備や既に引用された文献で新規性または進歩性を指摘する情報提供は参酌されないことが多いです。これは、このような情報提供の内容を認めてしまうとこれまでの自らの審査に不備があったことを認めてしまうことになるのでできれば避けたいという審査官の心情が原因なのではないかと推測します。


3.審査官の負担を減らす

審査官も忙しいので情報提供の内容を参酌するための労力が大きければ大きいほど、情報提供の内容を無視したくなくなると思います。このため審査官が情報提供を参酌するための負担をできるだけ軽減するようにしています。

例えば、新規性を攻撃する場合は、文章だけでなく一目で新規性がないことがわかるような図や表を添付します。これにより審査官は長々とした説明を読まずとも即座にクレームされた発明に新規性がないことを理解することができ、審査官が情報提供の内容を把握するための負担を減らすことができます。

また上述した図や表とは別に新規性がないことを詳細に説明した文章も添付します。こうすることで審査官は当該文章を単にコピペするだけで情報提供の内容を参酌したOAを作成することができ、審査官のOA作成時の負担を減らすことができます。


4.まとめ

上述した3つの点を意識すれば審査官に情報提供の内容を参酌してもらえる可能性を上げられると思います。特に効果的と私が個人的に思うのは(2)の「新たな文献で新規性を攻撃する」です。強力な証拠に基づく情報提供であれば審査官も無視しにくくなります。一方で脆弱な証拠しかない場合は、情報提供自体の是非を再検討したほうがよいです。見込みがない情報提供をしてしまうと、特許成立の阻害というメリットは一切得られず、出願人に第三者が当該出願に興味を持っていることを知らせてしまうというデメリットだけを被る恐れがあるからです。