徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2019年02月

3.6.3 データ検索、フォーマットおよび構造

媒体上に、または電磁的搬送波として具体化されたコンピュータで実行されるデータ構造またはデータフォーマットは、全体として技術的特徴を有し、したがってEPC52条(1)の意味における発明である。

データ構造およびデータフォーマットを評価するとき、機能的データと認知的データのとで区別がされる(T 1194/97)。機能データは、データを処理する装置の動作を制御する役割を有する。機能データは本質的に、装置の対応する技術的特徴を含むかまたは反映する。一方、認知データとは、その内容と意味が人間のユーザーにのみとって重要なデータのことである。機能的データは技術的効果の発生に寄与するが、認知的データはそうではない。

例えば、画像検索システムで使用するための記録担体は、コード化された画像、そしてその記録担体からの画像を復号しアクセスする方法をシステムに指示する行番号およびアドレスについて定義されたデータ構造を記憶する。このデータ構造は本質的に写真検索システムの技術的特徴を含む条件で定義された機能データである。写真検索システムとはすなわち記録担体およびそれから画像を検索するための読取装置である。従って、それは記録担体の技術的性質に寄与するが、記憶された画像の認識内容(例えば人または風景の画像)は技術的性質に寄与しない。同様に、データベース内の記録を検索するために使用されるインデックス構造は、コンピュータが検索操作を実行する方法を制御するので機能的データである(T1351/04)。

他の例は、ヘッダと内容部とを有する電子メッセージである。ヘッダ内の情報は、受信メッセージシステムによって自動的に認識され処理される命令を含む。この処理では内容要素がどのように構築され最終受信者に提示されるべきかが決定される。ヘッダ内のそのような命令の提供は電子メッセージの技術的性質に寄与するが、認知データである内容部内の情報はそうでない(T858/02)。

ただし、抽象論理レベルのデータモデルおよびその他の情報モデルには、それ自体技術的性質を有さない(G-II, 3.6.2を参照)。

参考資料:


EPC規則28条(2)は2017年7月1日に発効し、本質的に生物学的な方法により得られた植物および動物を特許の対象外とすることを規定する規則です。この規則は欧州特許庁の拡大審判部による欧州特許条約(EPC53条(b))の解釈に反するとして導入当時から物議の的となっていました。そしてこの度、欧州特許庁の審判部がEPC規則28条(2)を無視し、拡大審判部によるEPC53条(b)の解釈を優先した判決を下しました(T1063/18)。

判決文の重要箇所の和訳は以下の通りです。

「規則28(2)が拡大審判部によって解釈されたEPC53条(b)と矛盾していることを確認した以上、EPC164条(2)の観点から欧州特許条約の規定を優先すべきである。」
"Having established that Rule 28(2) EPC is in conflict with Article 53(b) EPC as interpreted by the EBA and in view of Article 164(2) EPC, it must be concluded that the provisions of the Convention prevail."

またこれまでの背景をまとめると以下のような感じになります。

出願人
「EPC53条(b)では本質的に生物学的な方法は特許の対象外としているけど、本質的に生物学的な方法で得られた物については何にも規定してないんだけど、そこんところどうなの?」

欧州特許庁拡大審判部
「EPC53条(b)の解釈によれば本質的に生物学的な方法により得られた物自体は特許の対象ですよ(G2/12、G2/13)」

欧州委員会
「はっ!?何勝手に判断してるの!?本質的に生物学的な方法により得られた物も特許の対象外とすべきでしょ!」

欧州特許庁
「欧州委員会様、承知しました。本質的に生物学的な方法により得られた物を特許の対象外とする規則28条(2)を新設します。」

欧州特許庁審判部
「はっ!?何勝手に規則新設してるの!?拡大審判部によるEPC53条(b)の解釈と反する規則28条(2)なんて無視ですよ!」←今ココ

参考条文:
Art. 53 EPC
European patents shall not be granted in respect of: 
(a) inventions the commercial exploitation of which would be contrary to "ordre public" or morality; such exploitation shall not be deemed to be so contrary merely because it is prohibited by law or regulation in some or all of the Contracting States; 
(b) plant or animal varieties or essentially biological processes for the production of plants or animals; this provision shall not apply to microbiological processes or the products thereof;
(c) methods for treatment of the human or animal body by surgery or therapy and diagnostic methods practised on the human or animal body; this provision shall not apply to products, in particular substances or compositions, for use in any of these methods.

Rule 28(2) EPC
Under Article 53(b), European patents shall not be granted in respect of plants or animals exclusively obtained by means of an essentially biological process.

Art. 164(2) EPC
In case of conflict between the provisions of this Convention and those of the Implementing Regulations, the provisions of this Convention shall prevail.


PCT出願のドイツ国内移行の期限は優先日から30ヶ月です。この移行期限をうっかり徒過してしまったけれどもやっぱりドイツでの権利が欲しいという場合には以下の手段が考えられます。


1.欧州特許庁への移行

欧州特許庁への移行期限は優先日から31ヶ月です(EPC規則159条(1))。したがって優先日から30ヶ月のドイツの国内移行期限を過ぎてしまった場合であっても、優先日から31ヶ月以内であれば通常の手続きに従い欧州特許庁にPCT出願を移行させることができます。

そして欧州特許庁で権利化をし、ドイツで権利を有効化すればドイツ国内での権利が得られます。


2.欧州特許庁への移行+Further Processing

欧州特許庁への移行期限の31ヶ月を徒過してしまった場合であっても手続きの続行(Further Processing)の期間内であれば所定の費用の納付を条件に欧州特許庁に移行することができます。

Further Processingの申請が可能な期間は「権利喪失の通知(Loss of rights)」の通知から2ヶ月です(EPC規則135条(1)。また権利喪失の通知は移行期限の徒過から通常1~2ヶ月後に送付されます。

そして欧州特許庁で権利化をし、ドイツで権利を有効化すればドイツ国内での権利が得られます。


3.その他

出願人の責めに帰することが出来ない理由が存在する場合は、権利の回復制度を利用することでドイツに移行することも可能です(ドイツ特許法123条)。

一方で、ドイツ国内法が規定するFurther Processingは(ドイツ特許法123a条)、欧州特許庁のFurther Processingと異なり移行期限の徒過を対象としていないので利用することはできません。





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