徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2018年11月

欧州特許庁の決定(主に審査部そして異議部の決定)に不満がある場合は審判部(Board of Appeal)に審判(Appeal)を請求することができます(EPC106条(1))。この審判のフローは以下の通りです。
Appeal Flow
備考
・欧州特許庁の審査部および異議部による口頭審理の召喚状と異なり、審判部による口頭審理の召喚状には審判部の見解書が通常添付されません。
・審判請求から決定までの期間については審判部のAnnual report 2017を参照しました。





1.調査期間(調査の開始からサーチレポート発行までの平均期間):
Search_Duration

2.審査期間(審査請求から規則71条(3)の通知までの平均期間):
Bild1
3.異議期間(異議申立期間の終了から決定までの平均期間):
Opp_Duration

備考:
縦軸の単位は全て月です。

ソース:



ドイツ弁理士の年齢別平均月収(額面)です。
Gehalt
 25歳 3460ユーロ
 30歳 6020ユーロ
 35歳 7555ユーロ
 40歳 8278ユーロ
 45歳 8788ユーロ
 50歳 8357ユーロ

ソース:https://www.gehaltsvergleich.com/gehalt/Patentanwalt-Patentanwaeltin
 
解説:

弁理士受験資格に理工系大学の卒業資格と3年の研修期間とが求められるドイツでは25歳でドイツ弁理士になることは極めて稀です。したがって、上記25歳の値はドイツ弁理士ではなくドイツ弁理士候補生の月給に対応すると思います。

また成功している事務所(弊所のことではありません)の経営者(パートナー)クラスのドイツ弁理士になると年収50万ユーロ以上を稼ぐ人もいると聞きます。


以前の記事「EPOにおける数値範囲の新規性」で数値範囲の選択発明はガイドライン上以下の3つの要件を満たせは新規性が認められると説明しました。

a)選択された数値範囲が、引用例の数値範囲よりも狭いこと
b)選択された数値範囲が、引用例に具体的に開示された実施例の数値および引用例の数値範囲の上限または下限から充分に離れていること
c)選択された数値範囲が、先行技術の任意の範囲でなく、異なる発明であること(例えば選択された範囲で異なる効果があること)

当該3つの要件は現在でもガイドラインに定められています(GL G-VI, 8)。

しかしながら近年の欧州特許庁の審判部の判決では上記c)の要件は、新規性ではなく進歩性の要件として取り扱われることが主流です。このため近年の欧州特許庁の審判部の判決では上記c)の要件は新規性判断の際には考慮されないことが多いです(T40/11、T1948/10、T378/12)。

したがって上記c)の要件に基づいて選択発明の新規性が否定された場合は上記判例を引用して反論を試みることをお勧めします。

特にEPC54(3)条の文献(日本でいう29条の2の文献)やClosest Prior Artとして適さない文献が引用されている場合は、新規性さえクリアできれば進歩性で問題となることはありません。このため上記c)が新規性の要件か又は進歩性の要件かは重要な問題であると言えます。


経済のグローバル化に伴い日本企業がドイツ企業を買収するケースが増えてきています。しかし欧州における開発拠点としてドイツ企業を買収はしてみたもも知財に関する社内制度が全く整っておらず、一体何から手を付けてよいかわからないということは少なくありません。また買収したドイツ企業内の情報を把握できずに勝手に勝算のない特許訴訟を提起され、日本でのビジネスにもリスクとなってしまうというお話も聞きます。

そういったお悩みをおかかえ日本企業のために弊所では「ドイツ企業知財部サポートサービス」を提供しております。 このサービスには主に以下の3つの項目が含まれます

1.ドイツ企業内での職務発明制度の設立
ドイツの従業者発明法に従い、社内ルール、報酬金の設定等のお手伝いを致します。またドイツの従業者発明制度は日本の職務発明制度と異なる点が多いため、ドイツの従業者発明法に基づいて作成された社内ルールは日本での稟議に通りにくいということがあります。そういった場合には日本まで伺い関係者の方々に日本の職務制度との差異を明確にしながらドイツの従業者発明法に基づく社内ルールについて説明させて頂くことも可能です。

2.従業員の知財教育
これまで知財の制度が整っていなかった会社ではそもそも従業員はどんなものが特許の対象となるか、商標とは何かなどの基本的な知識を有していません。またそういった根本的な知識が不足している場合は折角設立した社内の職務発明制度の運用も困難です。そこでドイツ企業を定期的に訪問し、従業員に対する知財教育そして職務発明制度の運用のお手伝いを致します。またその際に発明の発掘作業もお手伝い致します。

3.定期的な報告
定期的な訪問の際にドイツ企業から得られた情報を報告します。これによりドイツ企業の知財活用レベルの推移を把握できるだけでなく、日本の本社が知らない内に勝手に係争関連の手続き等を進められるといったリスクを低減することができます。

当該サービスにご興味のある方はご連絡下さい。
 E-Mail:KHasegawa@wbetal.de (@は小文字)
 TEL:+49 8161 930342


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