徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2018年06月

次回の大阪での弊所主催セミナーのトピックおよび日程が決定致しましたのでご案内申し上げます。

● トピック:「90分で学ぶドイツの裁判所によるクレーム解釈の基礎」
 年間1500件以上の特許侵害訴訟が提起されると言われているドイツでは日本企業も係争に巻き込まれるリスクがあります。ドイツにおける係争リスクを適切に判断するためには、まずドイツにおける侵害訴訟でクレームがどのように解釈されるかを学ぶ必要があります。本レクチャーではドイツの最高裁(BGH)の判例を参照しながらドイツの裁判所のクレーム解釈の基本的考え方を紹介したいと思います。

● 日程: 2018年8月2日(木曜日) 

● 時間: 18:00~19:30 

● 会場: TKPガーデンシティ東梅田 ミーティングルーム6C
     〒530-0057 大阪府大阪市北区曾根崎2丁目11−16梅田セントラルビル8階

● 会費: 無料

● 講師: Winter Brandl et al.特許法律事務所 長谷川寛

● 定員: 先着20名 

● 参加方法: 本セミナーへの参加をご希望される方は、KHasegawa@wbetal.deまで以下の項目をご明記の上ご連絡下さい。

 【大阪8/2 セミナー参加希望】
 【ご氏名:         】
 【ご所属先:        】
 【メールアドレス:     】
 
皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。


欧州調査処理件数:
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審査処理件数:
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データソース:

次回の東京での弊所主催セミナーのトピックおよび日程が決定致しましたのでご案内申し上げます。

● トピック:「90分で学ぶドイツの裁判所によるクレーム解釈の基礎」
 年間1500件以上の特許侵害訴訟が提起されると言われているドイツでは日本企業も係争に巻き込まれるリスクがあります。ドイツにおける係争リスクを適切に判断するためには、まずドイツにおける侵害訴訟でクレームがどのように解釈されるかを学ぶ必要があります。本レクチャーではドイツの最高裁(BGH)の判例を参照しながらドイツの裁判所のクレーム解釈の基本的考え方を紹介したいと思います。

● 日程: 2018年8月7日(火曜日) 

● 時間: 18:00~19:30 

● 会場: TKP東京駅丸の内会議室 カンファレンスルーム4C
     〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビルB1

● 会費: 無料

● 講師: Winter Brandl et al.特許法律事務所 長谷川寛

● 定員: 先着35名 

● 参加方法: 

定員満席となりましたので申込み受付を終了させて頂きます。多数のお申込み誠にありがとうございました。大阪ではまだ席に余裕がございますのでご検討下さい。




ドイツの四大特許法律事務所であるGruenecker、Hoffmann Eitle、MaiwaldおよびVossiusは共同で欧州特許庁を批判する公開状を発信しました。

批判の対象となったのは近年生産性向上のためにバティステリ庁官の主導の下変更された調査および審査のインセンティブシステムです。変更後のインセンティブシステムは審査官を完了した手続(調査報告または査定)の数によって評価することで調査および審査手続きを迅速化させることを目的としています。

上記4大特許法律事務所はこのインセンティブシステムが欧州特許庁における調査および審査の質を低下させていると批判しています。批判の要点は以下のa)~f)です。

a)時間内に可能な限り迅速に手続きを終了することが目的となると調査および審査の品質がどうしても犠牲になる。

b)国際比較で高額な欧州特許庁の調査・審査費用は審査官が出願の審査のために十分な時間を有していることによってのみ正当化できる。

c)不十分に審査しかされず誤った保護範囲を持った特許は、EPC加盟国内の経済競争を歪め、妨害してしまう。

d)不十分に審査しかされなかった特許の所有者は、競合他社に対して許可された全範囲内での権利行使をできないリスクに晒されてしまう。

e)欧州特許システムのユーザが、欧州特許が信頼に値しないとの印象を頂いた場合、ユーザはますます欧州特許出願を控えるであろう。これにより特許システム全体が揺るがされる恐れがある。

f)欧州特許庁の庁費用は、欧州特許庁の自己の運営費用を賄うためのものである。しかしながら企業と異なり公共業務を主要タスクとする欧州特許庁には自己の運営費用を超えて利益を確保する必要があるとは思えない。欧州特許庁の高い黒字は高すぎる手数料を示唆するものであり、さらなる生産性の上昇は適切ではない。

全文は以下のURLに公開されています。

個人的感想:
ドイツの4大特許法律事務所が合同で欧州特許庁を批判したのはインパクトがあります。しかしながら欧州特許庁での調査および審査の迅速化は事務所にとっては依頼人にあたる出願人が欧州特許庁とのミーティング等で要請し続けてきたことによる結果です。依頼人の要請による結果を代理人である事務所が批判するのは代理人として出過ぎた行為に思えます。

実際に欧州特許庁の調査および審査の迅速化が著しくなった2016年から2017年にかけては欧州特許出願の件数は増加しています(日本からの出願も5年ぶりに増加しました)。これは出願人が欧州特許庁の手続きの迅速化を歓迎していることを示唆しても、出願人が欧州特許庁の手続の質を懸念していることは示唆していません。

そうするとこの4大特許法律事務所による公開状は依頼人である出願人の視点をあまり意識しているとは思えません。

ただ欧州特許庁の手数料が高すぎるという点には同意できます。黒字を出すぐらいだったら手数料を下げて欲しいものです。


PCT出願をした場合、日本特許庁による国際調査報告の結果を参照して国際段階または各国移行時に特許性(新規性および進歩性)を考慮した補正が検討される場合は多いと思います。しかしPCT出願を欧州特許庁に移行する予定がある場合は、以下の4つの理由から特許性を考慮した国際段階または移行時の補正はお勧めできません。

1.日本特許庁による国際調査の結果があまり参照されない
 欧州特許庁は日本の特許庁が国際調査機関であっても移行後は通常の調査を行います。また欧州特許庁は調査の際に日本特許庁の調査報告をあまり参照していないと思います。欧州特許庁による調査報告では日本特許庁が国際調査で引用したX文献(新規性を否定する文献)またはY文献(進歩性を否定する文献)が全く引用されないことが多々あるからです。また日本特許庁が国際調査で特許性を認めたケースであっても、7割以上の確率で欧州特許庁によって新たなX文献またはY文献が引用されます。このため日本特許庁による国際調査を参照して特許性を確保する補正をしても無駄になることが多いです。

2.新規事項の追加と判断される
 また欧州特許庁は日本特許庁よりも補正による新規事項の追加に厳しいため、国際段階で日本の実務感覚で行った補正が新規事項の追加と判断されるリスクも無視できません。

3.補正によって柔軟な権利化が制限される
 ここまで読んで頂いて「移行段階で追加した特徴が欧州特許庁の調査報告で無駄だと分ったら、その特徴を削除すれば良いじゃない」と思われる方もいるかと思います。しかし既に調査が終了した独立クレームから特徴を削除する補正は、未調査の発明への補正を禁止するEPC137条(5)に抵触するとして認めらないことが多いです。このため無駄な特徴をいれたまま審査を継続せざるを得ず、柔軟な権利化が制限されてしまいます。

4.欧州代理人費用も嵩む
 国際段階または移行時に補正をした場合はどうしても準備書類の量が増え、そしてその分欧州代理人の作業量も増えてしまいます。このため補正をしたが故に別途費用が請求されてしまう場合があります。

まとめ
 このように特許性を考慮したPCT出願の国際段階または欧州移行時での補正は無駄になるだけではなく、柔軟な権利化を制限したり、追加で費用を発生させたりする恐れがあります。このため特許性を考慮した国際段階または欧州移行時での補正はお勧めしません。どうしても補正をしたいということであれば独立クレームはいじらず、従属クレームを追加する程度に抑えることをお勧めします。

一方で移行時にクレームの数を15以下に減らしたり、各特長の後に附番を付したり、1カテゴリー1独立クレームにしたりと欧州での形式面を考慮した補正は費用を削減したり、その後の権利化をスムーズにするのでお勧めできます。


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