徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2018年03月

これまで私が講師を勤めたセミナーのトピックのうち評判が良かったもののリストです。

「わが社でもこのテーマでレクチャーして欲しい」というご要望がございましたらお気軽にご相談下さい。


1.低コストに欧州特許を取得するには
 どのようにすれば戦略的に欧州特許の取得費用を削減できるかについてレクチャーします。より具体的には、欧州特許実務に即した明細書およびクレームのドラフティングによる出願費用の削減、審査の促進化による維持年金の削減そして効率的なOA対応による代理人費用等の削減を通した費用削減の手法を紹介します。実務を担当されている方から出願戦略を担当されている方まで幅広い層を対象とします。

2.いまさら聞けない欧州単一特許制度

 最新のニュースを含めた欧州単一特許制度について分かり易く紹介します。特に従来の欧州特許制度と比較したメリット、デメリットについても重点的に説明します。また制度が発効する前までにどのような準備を整えておくべきかについても説明します。どちらかというと出願戦略を担当されている方を対象とします。

3.欧州における進歩性の検討プロセス
 課題解決アプローチの基本的な考えを説明した上で、モデルケースを用いて欧州で進歩性を否定された場合どのように対応を検討すればよいかについてレクチャーします。また欧州代理人に効率的に進歩性についての意見書を作成させるには、どのような指示書を作成すればよいかについても併せて説明します。どちらかというと実務を担当されている方を対象とします。

4.実際どうなの?ドイツ特許  
 近年日本からのドイツ特許出願が急増しています。レクチャーではドイツ特許出願に関する基本的事項、コスト、特許査定率、日本の制度との差異、日本とのクレーム解釈の差異、権利の安定性、権利行使のしやすさなどについてデータを用いて説明します。実務を担当されている方から出願戦略を担当されている方まで幅広い層を対象とします。

5.欧州向けクレームドラフト術
 欧州特許庁における条文、審査基準および判例を参照しながら欧州ではどのようにクレームをドラフトすれば出願を効率よく権利化へと導くことができるかについてレクチャーします。また欧州におけるクレームの記載要件不備を原因とするOAを防ぐために、明細書にどのような事項を盛り込むべきかについても併せて説明します。どちらかというと実務を担当されている方を対象とします。

6.EPOにおける情報提供および異議申立
 情報提供および異議申立を通して効率的に欧州特許の成立を妨害する方法についてレクチャーします。さらに権利者の立場から情報提供および異議申立による攻撃から如何にして欧州特許を守るかについても説明します。そして日本企業にとってあまり馴染みのない欧州における「口頭審理」の際に 注意すべき点についても触れます。どちらかというと実務を担当されている方を対象とします。


日本からの現地代理人へのOA対応の指示書は一般的に高品質です。例えば補正案を含むOA対応の指示書には補正の根拠、発明の説明および引用文献との差異等に関する情報がしっかりとコメントとして記載されている場合が多いので、現地代理人としてはOA対応がやりやすいと思います。

しかしながら補正の根拠、発明の説明および引用文献との差異等の情報は、その気になれば現地代理人自らが明細書および引用文献を読み込むことで入手することは可能です。したがって、補正の根拠、発明の説明および引用文献との差異等の情報等を含まず単に補正案だけの指示書を貰ったとしても(もちろん作業時間は長くなり代理人費用が嵩んでしまいますが)最終的に作成される提出書面の品質にはそれほど影響を及ぼさないと思います。

一方で、そのような高品質な日本からのOA対応の指示書であっても権利化業務に極めて大きな影響を及ぼしながらも現地代理人が知ることができないある情報が含まれていることは稀です。

権利化業務に極めて大きな影響を及ぼしながらも現地代理人が知ることができないある情報、それは。。。。

クレームがカバーすべき自社または他社の実施形態の有無についての情報

です。

日本の出願人から物理的にも心理的にも比較的遠い場所にいる現地代理人にとってはこの情報には教えてもらう以外にはアクセスする術がありません。しかしクレームがカバーすべき実施形態があるか無いかによっては権利化の戦略が大幅に変わってくるので、この情報の影響力は大です。この情報を現地代理人に事前に渡しておけば現地代理人が的外れな提案をしてくるリスクも減らすことができます。

このためクレームがカバーすべき実施形態が有る場合は、「従属項3までであれば実施している製品をカバーできるので限定してもよい」というような情報を積極的に指示書に盛り込むことをお勧めします。

また仮にクレームがカバーすべき実施形態が無い場合であっても、単に特許になればよい出願なのか、それとも出来る限り広い保護範囲を確保したい出願なのかのように出願の重要度に関する情報があれば、現地代理人も無駄なく目的を遂行するように働くはずです。

昨年に引き続き今年も日本知的財産協会主催の2018年度の研修「欧州特許制度」の一部で私長谷川が講師を務めさせて頂くことになりました。

研修の日程および概要は以下の通りです。

関東:
higashi2018
関西:
Nishi2018

より詳細な情報は以下の資料をご参照ください。
Wグローバルコース群(関東) - 日本知的財産協会  
Wグローバルコース群(関西) - 日本知的財産協会


受講者の皆様にとって有意義な情報および時間を提供できるよう努めます。欧州における権利化業務にご興味のある方は是非ともご参加下さい。

EPOでは、審査過程または異議過程で、第1希望のクレームについての主請求(Main Request)とは別に第2希望以降のクレームを補請求(Auxiliary Request)として提出することが制度上認められています。この補請求という制度は日本にはないため、日本の出願人にとってはあまり馴染みが有りません。しかしながらこの補請求の実務を誤ると対象となる出願または特許にとって致命的な結果を招きかねません。

以下、補請求の実務について日本の実務家が誤解しがちな4点を紹介します。


誤解1:補請求を提出すると主請求の審査がいい加減になる

補請求を提出することで主請求の審査がいい加減になり主請求が認められにくくなることを懸念される場合があります。しかしながら主請求のロジックに妥当性があれば仮に補請求を提出したとしても主請求が認められます。すなわち補請求を提出したからといって主請求の審査がいい加減になるということはありません。


誤解2:補請求はそれぞれバラバラの方向性を有していてもよい


以下のように方向性が異なる補請求を検討される場合があります。
  補請求1:A+X
  補請求2:A+Y
  補請求3:A+Z
しかしEPOのガイドラインは原則として以下のように一方向に収束するように構成された補請求しか認めていません(GL H-III, 3.3.1.2)。
  補請求1:A+X
  補請求2:A+X+Y
  補請求3:A+ X+Y+Z
つまり方向性がバラバラの補請求は認められない(審査の対象とならない)ことがあります。


誤解3:新たな補請求の提出は口頭審理中でも認められる

補請求の提出が手続き上問題なく認められるのは口頭審理の召喚状で設定された書面提出の期限までです(EPC規則116条(2))。そして口頭審理中に提出された補請求は「遅れて提出された(late-filed)」ものとして扱われ、認められないことがあります(GL H-II, 2.7.1)。このため口頭審理中に新たな補請求が認められることを前提として補請求を出し惜しみすることは危険です。


誤解4:新たな補請求の提出は審判請求時に認められる

日本では拒絶査定不服審判請求の際に補正をすることができますが、EPOの審判部(Boards of Appeal)は、第一審(審査または異議)で審査されていない補請求を認めない権限を有します(RPBA12条(4))。このため審判請求時に新たな補請求が認められることを前提として補請求を出し惜しみすることは危険です。


まとめ

一般的に補請求を提出することに大きなデメリットはありませんが(誤解1参照)、補請求を出し惜しみすることには大きなデメリットがあります(誤解3および誤解4参照)。このため遅くとも審査過程また異議過程の口頭審理の召喚状で設定された期限までに考えられうる全ての補請求を提出しておくことをお勧めします。


Number_EP_2008-2017

ソース:
https://www.epo.org/about-us/annual-reports-statistics/annual-report/2017.html

http://www.epo.org/about-us/annual-reports-statistics/annual-report.html

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