徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2017年11月

審査の終盤、特許出願が査定になりそうになったときに、分割出願をして原出願でカバーしきれなかった実施形態の権利化を目指すという手法は日本では一般的です。しかしながら欧州特許庁では審査の終盤になって初めて分割出願の要否を検討するのではなく、審査開始の時点から分割出願の要否を検討し、早めに分割出願をすることをお勧めします。

理由はEPC規則51条(3)により分割出願の出願維持年金は、分割出願の出願日ではなく原出願の出願日を基準に起算されるからです。

早めに分割出願した場合と遅めに分割出願した場合とで納付すべき維持年金に具体的にどれぐらいの差がでるかを分かりやすくするため、以下の2つのモデルケースを紹介します。以下の2つのモデルケースでは原出願および分割出願共に出願から査定まで5年6月かかると仮定しました。

また各年度の出願維持年金の具体額は欧州特許庁の料金表をご参照下さい。

1.早めの分割出願のモデルケース:原出願から1年後に分割したケース
early divisional
2.遅めの分割出願のモデルケース:原出願の特許査定時に分割したケース
late divisional
結論:
上記モデルケースからも明らかなように分割出願の時期を早めるだけで総額維持年金を7000ユーロ以上削減することができます。このため欧州特許庁では審査開始の時点、例えば調査報告で単一性を指摘された時点等からすぐに分割出願の要否を検討し、必要であればなるべく早期に分割出願をすることをお勧めします。

参照条文:EPC規則51条(3)
Renewal fees already due in respect of an earlier application at the date on which a divisional application is filed shall also be paid for the divisional application and shall be due on its filing. These fees and any renewal fee due within four months of filing the divisional application may be paid within that period without an additional fee.

I.背景:

 私が勤務先の事務所から与えられているタスクの一つとして日本における新規顧客開拓があります。この新規顧客開拓は事務所にとっては確かに大切なことなのですが、既存のお客様にとってはなんら価値を生み出していないにも関わらずかなり時間と手間がかかります。このため私自身が既存のお客様のケアにより多くの時間を費やせるよう、新規顧客開拓活動に費やす時間を圧縮できないかと思い、自身の新規顧客開拓活動を分析してみました。


II. 分析方法:

 どのような活動が新規顧客開拓の成果に寄与いるのかを知るため、新しくご依頼を頂戴するに至ったお客様に対してご依頼を頂戴する前にどのような活動があったかを調べました。具体的には以下の4つの項目の有無を調べました。

(1)事前の無料個別相談
 ご依頼を頂戴する以前にメール又は電話での無料個別相談サービスを提供したか否かを調べました。

(2)事前の会食
 ご依頼を頂戴する以前に個別で会食または懇親会をご一緒させて頂いたか調べました。

(3)事前の訪問回数
 ご依頼を頂戴する以前に何度個別訪問させて頂いたかを調べました。

(4)事前のセミナー参加
 ご依頼を頂戴する以前に弊所主催のセミナーまたは私が講師を勤める外部機関によるセミナーにご参加頂いたか否かを調べました。


III.結果 :

(1)事前の無料個別相談
 以下のグラフに示すように事前の無料個別相談があったお客様の数は顕著に少ないことが分かりました。また無料個別相談のみがあり他の訪問等の活動が無かったお客様の数はゼロでした。このことから無料個別相談は成果への寄与度が極めて低いと思われます。
consulting ratio
(2)事前の会食
 以下のグラフに示すように事前の会食があったお客様の数は顕著に少ないことが分かりました。また会食のみがあり他の訪問等の活動が無かったお客様の数はゼロでした。このことから会食は成果への寄与度が極めて低いと思われます。
 dinner ratio
(3)事前の訪問回数
 事前の訪問回数は0回または1回がほとんどで、事前に3回以上訪問したお客様はゼロでした。これは2回以上の訪問は成果への寄与度が低いことを示唆します。
 visit ratio
(4)事前のセミナー参加
 事前のセミナー参加があったお客様の数は今回調査した項目の中で最も多いという結果となりました。これは私の活動の中で最も成果に寄与しているのはセミナー活動であることを示唆します。
seminar ratio

IV.考察 :

 新規顧客開拓のような営業活動は属人性が強いので一概にとは言えませんが、会食が成果への寄与度が少なく事前の訪問回数が0回~1回と少なかったという結果は、少なくとも私の場合「まずは足繁く通って自分を知ってもらう」という教科書通りの営業活動はあまり成果に繋がらないことを示唆します。

 また事前の無料個別相談は成果に繋がらないことが示唆されるので、今後当該サービスを限定しても成果には影響を及ぼさないと思われます。

 私の活動の中で最も成果に寄与していると思われるのはセミナー活動であったので、今後は当該活動に集中し、より質の高いセミナーを提供することで受講者の方々の満足度を上げることに注力したいと思います。そして他の活動を省くことによって得られた時間を既存のお客様のケアのために費やしたいと思います。

多くのEPC加盟国では例えば欧州特許の有効化手続き(Validation)で国内代理人を指定する際に委任状が必要となりますが、以下のEPC加盟国では国内代理人を指定する際に委任状が必要ありません。

 - アルバニア
 - ベルギー
 - デンマーク
 - フィンランド
 - フランス
 - ドイツ
 - アイスランド
 - ルクセンブルグ
 - オランダ
 - ポルトガル
 - スウェーデン
 - スペイン
 - トルコ
 - イギリス


多くのEPC加盟国では同一出願人によるダブルパテントを避ける趣旨から同一の対象物が欧州特許と国内特許との両方で保護される場合は、国内特許が制限されます。

 例えばドイツでは以前の記事でも説明したように欧州特許と同一の優先権を主張するドイツ出願について特許が付与された場合、ドイツ国内特許は、EP特許と重複する部分において効力を失うとされています。

しかし以下のEPC加盟国ではこのような欧州特許と国内特許との間のダブルパテントを禁止する規定がありません。このため欧州特許と同一の対象物を保護する国内特許であってもなんら制限されません。

 - デンマーク
 -フィンランド
 -アイスランド
 -ノルウェー
 -オーストリア
 -ポーランド
 -スウェーデン
 -ハンガリー

参考サイト:
http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/natlaw/en/x/index.htm

以下のEPC加盟国では特許権者が日本企業であっても維持年金の納付のために国内代理人は必要ありません。このためこれらの加盟国で欧州特許を有効化した場合、日本企業であっても維持年金を自ら納付することができます。
 
 - ブルガリア  
 - スイス 
 - チェコ  
 - ドイツ  
 - デンマーク  
 - マケドニア
 - エストニア  
 - スペイン  
 - フィンランド  
 - フランス  
 - イギリス  
 - クロアチア 
 - アイルランド  
 - イタリア  
 - リヒテンシュタイン 
 - ルクセンブルグ 
 - モナコ 
 - オランダ  
 - ノルウェー 
 - ポルトガル  
 - セルビア  
 - スウェーデン  
 - スロベニア  
 - スロバキア

このうち以下の加盟国では日本まで維持年金納付のリマインダーを送付してくれます。
 
 - ドイツ  
 - デンマーク   
 - フィンランド  
 - フランス  
 - イギリス  
 - モナコ 
 - オランダ  
 - ノルウェー 
 - ポルトガル  
 - スウェーデン 

参考サイト:
http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/natlaw/en/a/index.htm

  

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