徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2017年04月

最近の日本では「飲みにケーション」といえば昭和の悪しき遺産として忌み嫌われていたりもします。「こんな馬鹿げた風習は欧米には無い」と言われたりもしますが実はそんなことはありません。

少なくともドイツ(というか弊所)では、確かに日本のように仕事の後に飲みに行くという風習はありませんが、週末に上司の家に招待されたり、自分が上司を招待したりした際にお酒を交えてコミュニケーションを取る機会は結構あります。さらに私の場合、日本出張中は毎日のように同行している上司と飲みに行ったりしています。

しかしドイツで飲みにケーションを苦痛に思ったことはありません(単に私がお酒好きなだけかもしれませんが。。。)。以下に私がドイツの飲みにケーションで良いなと感じた5点を述べたいと思います。

1.少人数

あまり飲み会の参加者が多いとどうしても不特定多数の耳が気になり、個人的な話をすることを躊躇してしまいますが、少人数ですと安心して自分の話をすることができます。

この点ドイツではクリスマスパーティ等の定期的なイベントを除いてあまり大人数で飲みに行く風習がないので気に入っています。飲みにケーションをお互いのことを良く知り合うためのツールと考えると参加者の数はベストで2人、多くても5人程度が適切ではないかと思います。

2.飲みにケーション中は上下関係一切なし

飲みにケーションでは上司であっても私を立場の対等な友人として扱ってくれます。飲みの誘いをする段階から私の都合を先に聞いてもらえますし、お店選びでも私の希望を優先してくれたりします。断っても嫌な顔はされません。

飲んでいる最中も、私の話に傾聴してくれますし、仕事に関して説教を言われることは決してありません。説教をされながら飲む酒ほどまずいものはありません。部下である私がリラックスできるように色々と計らってもらいありがたいなあと感じます。

3.お酌なし

ドイツにはお酌文化がありません。特に私の住むバイエルン地方では他人からお酌されるのは不快とされています。このため完全に自分のペースで飲めるので楽です。

4.飲み過ぎない

理性を失うほど飲むとろくなことがありません。肉体的にも悪影響があります。その点ドイツではほろ酔い程度で会がお開きになるので精神的にも肉体的にも楽です。

5.2次会はなし

ドイツでの「飲みにケーション」は開始から1~2時間程度でお開きになります。このぐらいの時間ですと「もう少し話したかったな」という余韻を残しつつ飲み会が終わるのでまた一緒に飲みに行きたいという気持ちになれます。

まとめ

以上の5点によりドイツの飲みにケーションによれば「上司の説教がうざい」などのデメリット無しで「お互いをよく知り、社内でのコミュニケーションをより円滑にする」というメリットを享受できていると感じます。

実際に弊所でも多くのプロジェクトが日本出張中に新橋のガード下で決められていたりもします。

まさに圧倒的合格率です。。。

Erfolgsquote

ソース:
https://presse.dpma.de/docs/pdf/jahresberichte/dpma-jahresbericht2016_nichtbarrierefrei.pdf

ドイツ特許庁の2016年のAnnual Reportが公開されました。まだドイツ語版しか公表されておりませんが例年英語版も追って公表されています。

Annual Report に公開された統計データのほとんどは先日のプレスリリースで公開されたデータと重複するので割愛しますが、新たに2016年のドイツ特許出願の出願人ランキングトップ50のリストが公開されていたので引用します。日本企業では スズキ、矢崎総業そしてパナソニックが新たにランクインしました。

グラフィックス1

参考サイト:
https://presse.dpma.de/docs/pdf/jahresberichte/dpma-jahresbericht2016_nichtbarrierefrei.pdf

欧州特許庁における審査が「遅い、高い、厳しい」というイメージがすっかり定着してしまったせいか、近年日本の出願人には欧州特許庁の人気がありません。日本からの出願数は2012年から連続で減少しています(「日本から欧州特許庁への出願数の推移 2007-2016」参照)。それとは対照的に日本からのドイツ特許出願の数は2011年と比較して倍以上になっています(「日本からドイツ特許庁への出願数の推移 2007-2016」参照)。

日本で知財関係者と話しても最近は欧州での各国ルートの話題が活発で、欧州特許庁はあまり話題に上りません。

欧州特許庁もすっかり嫌われたものです。。。。

そんな中、今回はあえて逆張的な立場を取って今EPOルートを見直すべき3つの理由を紹介したいと思います。


理由その1:    思ったより早い

一昔前は欧州特許庁での平均係属期間が6年程度と言われていましたが、バティステリ長官の審査官との軋轢をも辞さない努力により今では4年弱まで縮められました(「最新データに基づくEPOでの平均係属期間」参照)。これに伴い納付すべき出願維持年金の総額も大分減りました。加えてバティステリ長官は公式ブログで審査期間をさらに縮めることを公言しています。

一方、例えば最近人気のドイツ特許庁では油断していると審査官に出願を2年も3年も放置されます。公式な統計データはありませんがドイツ特許庁では特に気を使わなければ審査期間だけでも5年程度かかると思います。

このため欧州で早期に権利が欲しい場合は、各国ルートよりもむしろEPOルートを選択したほうが賢いかもしれません。


理由その2:    思ったより高くない

日本では権利を取得したい国が3ヶ国以下である場合は、各国ルートのほうが安いという定説があります。例えばドイツ、イギリスおよびフランスで権利を取得したい場合は、EPOルートよりも各国ルートのほうが費用は安いと言われています。

しかしこの定説は事実に即していません。

以前の記事「EPルートは何ヶ国からがお得か?」でも説明しましたが実際には2ヶ国で権利を取得する場合であってもEPOルートのほうが各国ルートよりも安くなります。さらに上述したようにバティステリ長官が公言する審査期間の短縮によってさらなる出願維持年金の減額も見込まれます。

このため例えばコスト削減を目的にEPOルートからドイツ・イギリスの各国ルートに変更したという出願人にとっては、実は当該変更により逆にコストが増加していると考えられます。このような出願人には今一度EPOルートを見直すことをお勧めします。


理由その3:    思ったより厳しくない

欧州特許庁での審査は厳しく特許になりにくいというイメージがありますが、近年はそうでもありません。特に2016年はかなりの数の特許査定が発行され、特許査定数を完了した審査の数で割ることによって求められる特許査定率は69%にもおよびます(「欧州特許庁における特許査定率の推移」を参照)。

上記と同じ計算方式で求めた2016年のドイツ特許庁の特許査定率は66%程度です。つまり最近はドイツ特許庁よりも欧州特許庁でのほうが特許になり易いことを意味します。

このため一昔前の欧州特許庁での審査の厳しさに嫌気がさしてEPOルートから各国ルートに変更したという出願人はEPOルートを見直してもよい時期かもしれません。


まとめ

以上のことからわかるように欧州特許庁は近年「早い、値段もリーゾナブル、優しい」機関に変わりつつあります。バティステリ長官もまだまだ頑張ってくれそうなのでこの機会にEPOルートを見直してみてはいかがでしょうか。




欧州特許庁の2016年の年報に開示された以下の表によるとEESRを受け取るまでに5.1月、審査開始からIntention to grant (恐らくEPC規則71条(3)の通知)までの期間は23.3月となっています。
EPO_timelines

これを(1)パリルートのおよび(2)PCTルートの欧州特許出願のフローに当てはめると以下のようなタイムラインになります。一昔前よりも随分短くなりました。


(1)パリルート欧州特許出願
Euro_direct_duration
上記タイムラインに基づく欧州特許庁の係属期間は:
6月+6月+23.3月+約5月 = 40.3月  となります。

さらに40.3月係属していた場合に支払う出願維持年金の総額は:
470ユーロ(3年目維持年金)+585ユーロ(4年目維持年金) = 1055ユーロ になります。


(2)PCTルート欧州特許出願
Euro_PCT_Duration

上記タイムラインに基づく欧州特許庁の係属期間は:
7月+6月+6月+23.3月+約5月 = 47.3月 となります。

さらにPCTルートの場合、出願維持年金支払いの起算日は移行時ではなくPCT出願時になるので(EPC規則51条(1))、47.3月+19月で66.3月分の出願維持年金を支払うことになり、総額は :
470ユーロ(3年目維持年金)+585ユーロ(4年目維持年金)+820ユーロ(5年目維持年金)+1050ユーロ(6年目維持年金)= 2925ユーロ になります。



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