徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2016年10月

ドイツでも優先日から18月後に出願が公開される出願公開制度が採用されています(ドイツ特許法31条、32条)。

この出願公開を防ぐには、日本と同様にドイツでも公報の発行準備が完了する前に出願を取り下げるしかありません(ドイツ特許法32条(4))。

ドイツの場合、公報の発行準備が完了するのは期日(優先日から18月後)の12週間前となっています。
このためドイツ特許庁による出願公開を防ぎたい場合は、遅くとも期日の12週間前までには出願を取り下げることが必要になります。

ちなみに欧州特許庁においては、公報の発行準備が完了するのは期日の5週間前となっています。このため欧州特許庁による出願公開を防ぎたい場合は、期日の5週間前の取下げで足ります(ガイドラインA-VI, 1.2)。

参考資料:
https://www.dpma.de/service/veroeffentlichungen/mitteilungen/2011/mdp_nr09_2011.html



欧州ではクレーム数が15超である場合、超過クレームごとに235ユーロの追加クレーム費用が要求されます(EPC規則45条(1))。そしてPCTルートの場合は、この追加クレーム費用は移行時のクレーム数を基に計算されます(EPC規則162条(1))。このため欧州への移行時にクレーム数を減らして高額なクレーム費用の発生を防止するということが実務上よく行われます。

 一方ドイツではクレーム数が10超である場合、超過クレームごとに出願料に30ユーロ加算されます。ここまでは欧州と似ているのですが、ドイツではこの追加庁費用がPCTルートの場合移行時ではなく国際出願時のクレーム数に基づいて計算されるという点で欧州と異なります。

このためドイツでは移行時にクレームを10以下にしたからといって国際出願時のクレーム数が10超であれば追加庁費用の発生を防止できません。

尤も、ドイツの追加庁費用は欧州の追加クレーム費用と比べるとかなり低額なのであまり気にならないというユーザが多いのではないでしょうか。

ソース:
https://www.dpma.de/patent/patentschutz/europaeischeundinternationalepatente/pct-gebuehrenbeimdpma/index.html


欧州特許出願ではOAで指定された応答期間を徒過してしまうと、EPC94条(4)の規定に従い出願が取下げ擬制されてしまいます。このため欧州特許庁においてOAの応答期間を守るということは非常に重要になります。

一方でドイツにはEPC94条(4)に対応する規定がありません。すなわち応答期間の徒過を理由に出願が取り下げられるということはありません。

ドイツ特許出願で実際にOAの応答期間を徒過すると、通常審査官から電話または応答期間延長の通知によりリマンドされます。

とはいえ応答期間徒過後のリマインドは審査官の義務ではなく単なるサービスです。すなわち審査官は応答期間徒過後になんらリマインドなしに拒絶査定を出しても法律的には何ら問題ありません。そして事前通知なくOAの応答期間を徒過することは審査官の心証を悪くしますし、いたずらに審査を長期化しかねません。

このためドイツでもOAの応答期間は守ったほうがよいでしょう。



欧州において特許の無審査制度を採用する国のリストです。

・アンドラ
・アルバニア
・ベルギー
・スイス
・キプロス
・アイルランド
・イタリア
・リヒテンシュタイン
・ルクセンブルク
・モナコ
・マルタ
・オランダ

参考資料:
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai2/pdf/sangyouzasisankenhou_itiran/1tokkyo.pdf



1.背景:
日々の実務から出願書面のボリュームが大きいほど、欧州特許庁での審査が長期化しているように思えたので、出願書面のページ数と欧州特許庁における係属期間との関連について調べてみました。


2.調査対象:
2016年8月に特許査定が公開された日本企業の特許のうち:
・出願番号が若い特許(以下「早い特許」とも称する)100件(係属期間:2年未満)
・出願番号が古い特許(以下「遅い特許」とも称する)100件(係属期間:10年以上)


3.結果:
E:早い特許
S:遅い特許

(1)出願書面全体
Application pages
早い特許平均:46.8ページ
遅い特許平均:65.7ページ

(2)明細書
Description pages
早い特許平均:32.4ページ
遅い特許平均:48.4ページ

(3)クレーム
Claim
早い特許平均:3.2ページ
遅い特許平均:6.7ページ

(4)図面
Drawing
早い特許平均:11.2ページ
遅い特許平均:10.3ページ

(5)まとめ
・出願書面全体のページ数は遅い特許で多く、早い特許で少ない。
・明細書のページ数も遅い特許で多く、早い特許で少ない。
・クレームのページ数も遅い特許で多く、早い特許で少ない。差は特に顕著。
・一方、図面のページ数に差はない。


4.考察:

特にクレームのページ数の差が大きかったことから、クレームの記載量が多いことがEPOでの係属期間の長期化(=出願維持年金の高額化)につながる可能性がある。
一方で図面のページ数に差はなかった。これは早い特許では出願書面全体における図面のページ数の割合が高いことを意味する。このため、早い特許では、多くの図面を用いて発明を表現したことで、審査官の理解を促し、審査期間の短縮に繋がったとも考えられる。



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