徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2016年08月

欧州特許庁の審判部の最新版判例集第8版(The 8th edition of Case law of the EPO boards of appeal)が欧州特許庁のホームページ上で公開されました

https://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/case-law.html



日本人の弁理士(日本国弁理士または欧州特許弁理士)が在籍するヨーロッパの特許・法律事務所のリストです。


Betten & Resch


Cabinet Beau de Loménie
 
CABINET PLASSERAUD

Dennemeyer

Fedit-Loriot

Global IP Europa

Grünecker

Hoffmann Eitle

IPecunia Patents BV

Klunker IP

Maiwald



Meissner Bolte

Mewburn Ellis

Müller-Boré


Plougmann & Vingtoft

Regimbeau



TBK

Vossius & Partner

Wagner & Geyer

Winter & Brandl et al.

この事務所が抜けている!ということがあれば是非ご連絡下さい。


先日、欧州特許弁理士の登録手続きが終了し無事に欧州特許弁理士になることができました。欧州ではバッヂや登録証というものは無く、欧州特許庁からの以下のようなレターが送られてきただけでという素っ気ないものでした。

Bild1

これまでは私はあくまで補助者という立場でしたなかったため提供できるサービスに限界がありましたが、今後はより柔軟かつ充実したサービスが提供できるようになると思います。

とういう訳で日本企業の知財部および日本の特許事務所の皆様!皆様からのご依頼をお待ちしておりますので、じゃんじゃんお問い合わせ下さい!



ドイツ・欧州と日本との審査で根本的に考えが異なるのがクレーム解釈をする際に明細書を参照するか否かです。

例えば日本ではクレームの記載が不明確な場合は、「明細書又は図面中に請求項の用語についての定義又は説明があるかどうかを検討し、その定義又は説明を出願時の 技術常識をもって考慮して請求項中の用語を解釈することによって、請求項の記載が明確といえるかどうかを判断する。その結果、請求項の記載から特許を受け ようとする発明が明確に把握できると認められれば36条4項2号の要件は満たされる」とされています(日本審査基準 第I部 第2章 2.2.2.1)。すなわち日本の審査ではクレームの解釈に明細書が参照されます。

一方、ドイツおよび欧州ではクレーム中の用語の解釈に明細書は参照されず、例えばクレームが記載が不明確な場合は、クレームの記載自体で意味が明瞭になるよう、クレームの補正が求められます(EPO GL F-IV, 4.2およびX ZR 93/85参照)。同様に新規性の判断でもクレームの解釈のために明細書が参照されません。

このため、ドイツおよび欧州においては
「○○という用語は、明細書で記載されているように●●という意味なので本発明は明確(新規)である」
といった主張は、残念ながら無意味です。

上記例の場合は、ドイツおよび欧州ではクレームにおいて「○○」を「●●」という用語に補正しなければ明確性(新規性)は認められません。



日本語の明細書では○○部という表現はよく用いられます。この「○○部」の英訳として日本ではよく「○○portion」という表現が用いられますが、この表現が適切でない場合がよくあります。

例えば以下の図1に示された構造を説明するために日本語の明細書の壁部という表現があるとします。この場合、壁部は青色で示された壁を構成する部材全体を指していると解釈してもしっくりきます。ですので例えば「壁部は底板に溶接された一枚の金属板である」と記載しても日本語的にはなんら違和感はありません。

wallJP
図1

しかし壁部を「wall portion」と訳してしまうとどう理解されるでしょう。

Merriam-Webstarによるとportionとは「a part of a larger amount, area, etc」です。したがって「wall portion」という文言は以下の図2に示すように壁を構成する部材の一部(青色で示された領域)を意味すると解釈するのが自然になります。

wallEP
図2

したがって「a wall portion is a single metal plate welded to the bottom plate(壁部は底板に溶接された一枚の金属板であり)」なんていう表現は、欧米の審査官および代理人によっては技術的に違和感がアリアリで「壁の一部が溶接された一枚の金属板???溶接された金属板以外に壁を構成するものがあるってこと???」と不要な混乱を招くことがあります。

このように「部」がある構成または部材の全体を指している場合は「portion」という訳は適切ではありません。

本例では壁部は「wall」または「wall member」と訳すのがより適切かと思います。




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