徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2015年10月

欧州特許の成立後のValidation(有効化)の際には未だに多くの締約国で翻訳文の提出が求められます。多くの出願人にとっては欧州特許が成立したことに安心し、Validationの際に求められる翻訳文の品質まで気を使うことはあまりありません。

しかしこの翻訳文、実はかなり大切です。

原則、欧州特許のEPOにおける手続語による正文は、各締約国におけるすべての手続において正本となります(EPC70条(1))。すなわち例えば英語で審査が行われた欧州特許の英文クレームが、原則全ての締約国での権利範囲を規定します。 しかし翻訳文のクレームが、手続き言語による正本のクレームより狭い場合は、ドイツ、ベルギー、スイス、フランス、スエーデン、イギリス以外の全ての締約国において翻訳文が権利範囲を決定します(EPC70条(3)、National law relating to the EPC)。

一方、翻訳文のクレームが、EPOの手続き言語による正本のクレームより狭い場合は、翻訳文を手続き言語による正本に合わせて訂正をすることができますが(EPC70条(4)(a))、この場合、元の翻訳文のクレームの範囲外の行為については無償の通常実施権が発生します
(EPC70条(4)(b))

このようにValidationの際の翻訳文は権利範囲を狭めてしまう恐れがあるという点で、品質には注意すべきです。

欧州特許庁と同様にドイツでもPCT23条の規定により、移行期限満了(優先日から30ヶ月)前に審査を開始することは原則禁止されています。

この禁止は、仮にドイツへの移行と同時に審査請求をしても、促進審査を請求しても解除されません。

この禁止を解除するためには欧州特許庁のEarly Processingに相当するVorzeitige Bearbeitungを申請することが必要になります。具体的には以下の図に赤字で示された移行申請書の項目7のチェックボックスにチェックを入れます。

ドイツ代理人は仮に早期の移行指示があった場合でも特別の指示が無ければ通常Early Processingを申請することはありません。したがって早期移行後直後に審査を開始させたい場合は、ドイツ代理人にEarly Processingの指示を別途することをお勧めします。
Early Processing DE

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