徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2015年01月

欧州特許弁理士試験の過去問から学ぶ欧州特許実務①の解答

1.欧州特許出願EP-Xに関して出願日の認定を受けるには、出願費用(filing fee)を納付することが必要である。


解答:誤
解説:出願日の認定にはいかなる費用の納付も求められない(EPC規則40条)。


2.
欧州特許出願EP-Xに関して出願日の認定のための要件が明日(2015年1月27日)に認められた場合、記者会見における発明X-1の公開は、欧州特許出願EP-Xに対しての先行技術(prior
 art)となる。

解答
:誤
解説:Prior Artとなるのは出願後に公開された情報である(EPC54条(2))。このため欧州特許出願EP-Xの出願日における記者会見の内容はPrior Artを構成しない。


3.
欧州特許出願EP-Xに関して出願日の認定を受けるには、少なくとも1つのクレームを有していることが必要である。

解答
:誤
解説:出願日の認定にはクレームの存在は求められない(EPC規則40条)。


4.
欧州特許出願EP-Xに関して出願日の認定を受けた場合は、ブラウンさんは欧州特許出願EP-Xについてパリ条約における優先権を有する。

解答:正
解説:パリ条約4条Aに従い、出願日が認められた欧州特許出願について優先権が認められる。

アイルランドの国民でありダブリンに住居を有するブラウンさんが自己の発明X-1について保護を受けたいと考えている。明日2015年1月27日、ブラウンさんは発明X-1について公の記者会見で初めて公開する予定である。このためブラウンさんは発明X-1についての最初の出願である欧州特許出願EP-XをFAXで欧州特許庁に提出する予定である。

以下の1~4の説明の正誤を示せ


1.欧州特許出願EP-Xに関して出願日の認定を受けるには、出願費用(filing fee)を納付することが必要である。


2.欧州特許出願EP-Xに関して出願日の認定のための要件が明日(2015年1月27日)に認められた場合、記者会見における発明X-1の公開は、欧州特許出願EP-Xに対しての先行技術(prior art)となる。


3.欧州特許出願EP-Xに関して出願日の認定を受けるには、少なくとも1つのクレームを有していることが必要である。


4.欧州特許出願EP-Xに関して出願日の認定を受けた場合は、ブラウンさんは欧州特許出願EP-Xについてパリ条約における優先権を有する。


解答の発表は後日


参考サイト:

欧州弁理士プレ試験過去問集


欧州特許庁では、出願日から3年目の各年度から特許の付与が公報に公告された年まで維持年金を納付しなければなりません(EPC86条)。

維持年金は、出願日の対応日が属する月の末日(満了日)までに支払わなければなりません(EPC規則51条(1))。また満了日3ヶ月前*⁾から維持年金を納付することが可能です(EPC規則51条(1))。 しかし、満了日から6ヶ月以内ですと割増料金を支払うことを条件として、維持年金を追納することができます(EPC規則51条(2))。当該追納期間に維持年金を納付しなかった場合は、欧州特許出願は取り下げ擬制されます(EPC86条(2))。しかし当然の注意をしたにも関わらず維持年金の納付ができなかった場合は、権利の回復の規定(EPC122条)によって維持年金を追納することができます。

欧州の維持年金の納付期限はドイツのそれとは若干ことなるので注意が必要です。

*)2018年4月1日から3年目の維持年金だけは満了日6ヶ月前から納付できるようになりました。

日本では分割出願が原出願の記載範囲を超えてしまった(新規事項を追加した)場合は、出願日の遡及効が認められず、独立した別の出願として取り扱われます。したがって出願が他の特許要件を満たせば(実際は原出願が邪魔をして困難ですが)特許が付与されます。

一方、欧州では分割出願が原出願の記載範囲を超えてしまうと、このことを理由として出願が拒絶されます。つまり日本のように独立した別の出願として取り扱われることはありません(Guidelines C-IX, 1.4)。このため出願が他の特許要件を満たしていたとしても、当該新規事項追加の問題を治癒しなければ、拒絶されることになります(EPC97条(2))。

もともと欧州特許庁は新規事項追加の判断に関して日本特許庁よりもかなり厳しいので、欧州特許出願を分割する際には原出願の記載範囲に属するか否かを特に注意して検討する必要があります。

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