徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2014年11月

先日の記事ではドイツでは方法クレーム中の用途限定は原則発明を限定しないと説明しました。ところが欧州特許庁では方法クレーム中の用途限定は発明を限定すると解釈される傾向にあります。


例えば審決T848/93によると、「プリント板上の錫または錫-鉛電流電層を溶融するため」の方法に関する発明は、引用文献の「気相はんだ付け」方法と手段が同じであるものの用途が異なることから新規性を有すると判断されています。当該審決では欧州特許庁は「プリント板上の錫または錫-鉛電流電層を溶融するため」という用途限定はクレームされている方法におけるステップの一つを規定していると解釈しています。


ただし欧州特許庁は、製造方法クレームにおいて製造される物の用途が限定されている場合は、当該用途限定は例示的な特徴として判断します。


例えば欧州特許庁は、


体液を吸収する使い捨て吸収性製品に関連した悪臭を減らすための方法であって、

吸収性製品の使用の前に、該吸収性製品に親水性/親油性バランスが約12より小さい界面活性剤の有効量を施す工程を有し、

該界面活性剤は尿の臭気を減少するのに有効であり、該吸収性製品は、水膨潤性水不溶性吸収材料を含むことを特徴とする方法。」


は実質的に製造方法のクレームであり、「体液を吸収する使い捨て吸収性製品に関連した悪臭を減らすため」という用途限定はせいぜい方法が当該用途に適していることを特定するに過ぎないと判断しています。このため上記クレームの新規性は、当該用途に関する開示はないものの、同一の手段を有し当該用途に適した方法を開示した引用文献によって否定されています(T304/08)。

日本では方法クレーム中の手段が同じであっても用途が異なれば、異なる発明と解釈されることがあります。

例えば、
平成25(行ケ)10255号審決取消請求事件では、「芝草の密度,均一性及び緑度を改良するための」方法に関するクレームは、引用文献に示された「芝生を全体にきれいな緑色に着色するための」方法と同じ手段を有するものの、用途が異なることから新規性を有すると判断されています。

一方でドイツでは方法クレーム中の用途限定は、一般的にあくまで例示的なものであるとして、発明を限定しないと解釈されます(BGH X ZB 9/09)。したがって上記日本の例の場合、ドイツでは新規性がないと判断される可能性が高いです。

またクレーム中の用途限定が発明を限定しないという考え方は、侵害訴訟の場でも適用されます。このため実施されている方法の用途が異なったとしても手段が特許された方法発明と同じであれば、仮に発明者が当該用途を認識していなかった場合であっても、権利範囲に属するとさることがあります(RGZ 85, 95)。

募集は締め切りました。沢山のご応募ありがとうございました。

前回
に引き続きまた弊所の求人情報を掲載させて頂きます。
私の勤務先であるWinter Brandl特許法律事務所は、以下の内容で技術スタッフを募集しています。


主な業務内容:
権利化作業および日本顧客対応(翻訳作業含む)

応募資格

・3年以上の実務経験者
・日本語が母国語または母国語レベルの方
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勤務地
弊所ミュンヘン支部またはフライジング本部

給与
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応募方法
:以下のメールアドレスに履歴書ならびに希望給与額および勤務開始可能時期に関する情報を含む応募書面を英語またはドイツ語で送付下さい。

e-mail: KHasegawa@wbetal.de

説明会
:アナウンスが直前となって大変申し訳ないのですが11月17日に開催される名古屋でのセミナー後(例えば19:30~)に懇親会を兼ねて今回の求人情報および弊所についての説明会を開催したいと思います。説明会ではざっくばらんに求人情報やドイツでの生活などについてご質問頂ければと思います。ご興味のある方々は是非ともご参加下さい。説明会への参加方法はセミナーの参加方法をご参照下さい。

皆様のご応募を心よりお待ちしております。

Benrisi

日本弁理士会の統計
によると2011年に欧州で働く(欧州の事務所を主たる事務所とする)日本弁理士の数は12人であったのに対し、2012年では18人(前年比50%増!?なにがあった!?)、2013年では19人(前年比5.5%増)2014年では27人(前年比42%増!?どうした!?)となっています。ここ3年足らずで欧州で働く日本弁理士の数が2倍以上になったことが分かります。

また日本弁理士以外でも日本語を母国語とする欧州弁理士の数も増えてきていることを実感します。その中には日本語、英語だけでなく、ドイツ語、フランス語にも堪能な方々も含まれます。さらに欧州の特許事務所でパラリーガルとして働く日本人の数も増えていると思います。

一方で日本からの欧州特許出願の件数は2008年をピークに横ばいとなっています。

これまで欧州における知財人材市場では日本語ができ実務ができるだけで優位性を保つことができましたが、これらのデータはこれまでとは別世界の幕開けを予感させます。環境の変化に取り残されぬようより一層自己研鑽に励みたいと思います。

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