徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2014年09月

EPOgrant (1)


上記グラフは、欧州特許をドイツ、フランス、イギリスで出願から20年間維持した際の欧州特許庁および各国特許庁に支払う年金の合計額を、出願から欧州特許までの期間別に示したものです。

例えば、出願から4年目(4年次)に欧州特許を受けた場合は、20年で支払う累積年金は、4年次までの欧州特許庁の累積年金(1045ユーロ)と5年次から20年次までのドイツ特許庁、フランス特許庁およびイギリス特許庁の累積年金の合計(24253ユーロ)との和の25298ユーロとなります。

また出願から13年目(13年次)に欧州特許を受けた場合は、20年で支払う累積年金は、13年次までの欧州特許庁の累積年金(12935ユーロ)と14年次から20年次までのドイツ特許庁、フランス特許庁およびイギリス特許庁の累積年金の合計(17820ユーロ)との和の30775ユーロとなります。

上記グラフから分るように、早期に欧州特許を得た場合と、極端に遅く(出願から20年目)に欧州特許を受けた場合とに累積年金が低くなります。一方で極端に遅くに特許を受けた場合、各国での権利存続期間がゼロに等しくなってしまい、権利保護の観点からは致命的です。

そう考えると、移行国の数が少ない場合(例えば3ヶ国)には、出来るだけ早期に欧州特許を取得したほうが維持年金の低額化の観点から好ましいといえます。



参考サイト:

http://www.epoline.org/portal/portal/default/epoline.Scheduleoffees

http://www.renewalsdesk.com/knowledge-base-home/country-patent-renewal-fee-guides/

 

欧州特許庁の累積維持年金とドイツ+フランス+イギリスの累積維持年金の合計額との比較

EPvsNATIONALS

日本企業がパリルートでドイツ出願をする場合、日本国内で作成した英文明細書に基づいてドイツ代理人に独訳を依頼し、ドイツ語でドイツ出願をするのが一般的だと思います。


この場合、日本の担当者は通常ドイツ語書面のチェックをできないので、日本企業側には「出願書面が適切に独訳されたか」という不安要素が残ります。


実際、日本語書面を参照できないドイツ代理人が行う独訳は、既に誤訳を含んでいる恐れが高い英文明細書に基づいて行われるので、伝言ゲームの要領で、ドイツ語書面の内容が原文から乖離し、誤訳が発生するリスクはより高くなります。

こういった不安要素が気になる場合には、日本語によるドイツ出願をお勧めします。原文としての日本語を提出することで、仮に誤訳があったとしても日本語書面を元に誤訳を訂正することができます。

欧州特許庁では明細書、クレーム、図面、要約および書誌的事項(書誌的事項に関しては複数ページに及んでも1ページとしてカウントされます)のページ数の合計が35ページを超える場合は、35ページを超えるページごとに15ユーロ(2014年8月現在)のページ費用(Page Fee)を支払わなければなりません。

PCT経由の欧州特許出願(Euro-PCT出願)の場合、このページ費用は、
国際公開公報のページ数を用いて計算されます。すなわち日本語でPCT出願がなされた場合は、日本語の国際公開公報のページ数を用いてページ費用が計算されます

例えば、日本語の国際公開公報の構成が、
 明細書25:ページ
 クレーム5:ページ
 図面:3ページ
 要約:1ページ
 書誌的事項:1ページ
であった場合、ページ数は35ページとしてカウントされ、追加のページ費用は発生しません。


この場合、ややこしいのが移行と同時に補正をした場合です。以下移行時にクレームを補正した場合と、明細書を補正した場合とに分けて説明します。ちなみに移行後の補正は、ページ費用に影響を及ぼしません



1.クレームを補正した場合
この場合、日本語の国際公開公報のクレームの代わりに補正後の英文クレームで、ページが計算されます。例えば上記例で、補正後の英文クレームのページ数が6ページである場合、以下のようにページ数は36ページとしてカウントされ、追加のページ費用15ユーロが発生します。

 明細書25:ページ
 補正後の英文クレーム:ページ
 図面:3ページ
 要約:1ページ
 書誌的事項:1ページ
 計:36ページ


2.明細書を補正した場合
ガイドラインA-III, 13.2によると、この場合、明細書のページ数は以下の式によって計算されます。

明細書ページ数公開された明細書のページ数補正された明細書のページ数-補正された明細書によって置換された明細書のページ数

しかし国際公開言語が日本語であり、補正後の明細書の言語が英語である場合については、補正された英文ページと置換された日本語ページとを対応させることができないため、上記計算でページ数を求めることはできません。このため実務上は、明細書の補正をした場合、明細書のページ数は補正後の英文明細書のページ数に基づいて計算されます。例えば上記例で、補正後の英文明細書のページ数が30ページである場合、以下のようにページ数は40ページとしてカウントされ、追加のページ費用75ユーロ(15ユーロ×5ページ)が発生します。

 補正後の英文明細書30
:ページ
 クレーム5:ページ
 図面:3ページ
 要約:1ページ
 書誌的事項:1ページ
 計:40ページ


3.まとめ

一般的に日本語の書面のほうが当該日本語書面の英文翻訳よりもページ数が少なくなります。このため、Euro-PCT出願のページ費用を抑えたい場合は、少なくとも明細書の補正については欧州特許庁への移行時にしないことをお勧めします。

 



参考資料:Guide for applicants, Part 2: PCT procedure before the EPO, E-VII

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