徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2014年06月

ドイツ特許庁における審査の遅さは、多くの日本企業の悩みのタネの1つです。審査が10年以上に亘ってしまい、権利化されたころには権利満了が目前ということも稀ではありません。

そんなドイツでも審査期間を平均2~2.5年まで短縮できる方法、すなわち審査請求から査定までの期間を平均2~2.5年とする方法があります。

その方法は極めて単純、ただ「出願から4ヶ月以内に審査請求をする」だけです。

以前説明したPPH早期審査申請では、促進効果が次のOAまでと限定的であるのに対し、本方法によれば審査期間全体に亘って促進効果が得られます。 ドイツにおいて審査の迅速化を図りたいのであれば使わない手はありません。

<参照サイト:ドイツ特許庁 Q&A集>
http://www.dpma.de/patent/faqs/index.html

日本での次回欧州特許セミナーのトピックおよび日程が決定致しましたのでご案内申し上げます。
また今回はセミナー後に懇親会を予定しております。併せてご参加頂ければと存じます。

● トピック: 「欧州における進歩性の検討プロセスと欧州代理人への指示書の書き方」
欧州特許庁における進歩性の認定は、厳密に課題解決アプローチという手法に基づいてなされます。欧州の課題解決アプローチに基づいた進歩性の判断基準は一般的に日本のそれよりも緩やかと言われていますが、日本と同じアプローチをしたのでは進歩性の主張が通り難くなる場合もあります。
本セミナーでは、課題解決アプローチの基本的な考えを説明した上で、欧州で進歩性を否定された場合、どのように対応を検討すればよいかについて説明したいと思います。また欧州代理人に効率的に進歩性についての意見書を作成させるには、どのような指示書を書けばよいかについても併せて説明したいと思います。

● 日程: 2014年8月1日(金曜日)

● 時間: 18:00~19:30 セミナー      
                19:30~ 懇親会

● 会場: 新宿カンファレンスセンターカンファレンス5A 
    〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-14-11 日廣ビル5階 
    http://tkp-shinjuku.net/access.shtml
   懇親会も同ビル内で予定しております。

● 会費: セミナー・懇親会ともに無料

● 講師: Winter Brandl特許法律事務所 長谷川寛

● 定員: 先着30名 

● セミナー対象者: 主に欧州特許の権利化に関わることがある企業知財部および特許事務所の担当者の方に有用となるような情報を提供できればと思っていますが、それ以外の方でも欧州特許実務に興味のある方であれば、是非ご参加下さい。

● 参加方法: 本セミナーへの参加をご希望される方は、以下のメールアドレスまで、ご氏名、ご連絡先、ご所属先、セミナー参加希望の旨および懇親会参加の可否を明記の上ご連絡下さい。

Email:KHasegawa@wbetal.de

ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

ドイツにおける侵害訴訟の場でも、文言侵害だけでなく均等論も重要な議論のテーマとなります。しかしドイツの均等論の要件は日本の均等論の要件とは若干異なるので、注意が必要です。以下にドイツにおける均等論の3つの要件について説明します。



1.同一効果性(
Gleichwirkung

当該要件では、代替性手段(Austauschmittel)が、対象特許のクレームに記載された解決手段が対象特許の教唆に従って達成しようとする効果と同一の効果を達成することが求められます。
日本でいうところの「置換可能性」に対応する要件ですが、ドイツでは「相違部分(代替性手段)が特許発明の本質的部分ではないこと」という要件がない点で、日本の均等論と異なります。



2.想到容易性(
Naheliegen
当該要件では、当業者が優先日の知識水準に基づいて進歩性を伴う考察をすることなく前記代替性手段を同じ機能を有する解決手段として見出すことができたことが求められます。
日本の「想到容易性」とほぼ同じ内容ですが、日本では判断時期が「侵害時」であるのに対し、ドイツでは判断時期が「優先日」である点で相違します。


3.等価値性(Gleichwertigkeit
当該要件では、当業者が、その変容された手段を有する変形実施形態を、クレームの文言に含まれる具体的な実施形態と同価値の解決手段として考慮に入れることができたことが求められます。
例えば登録特許の明細書中に代替性手段を除外する旨の記載があったり、代替性手段が登録特許の明細書中には記載されているものの、クレームには記載されていない場合は、当該要件は満たされないと判断されます。日本の「包袋禁反言」と混同されがちな要件ですが、出願手続における補正や意見書は考慮されないという点で「包袋禁反言」とは異なります。


<参考文献:Schulte>

欧州特許庁は、クレームがパラメータを含む場合、パラメータの測定方法をクレームに組み込むことを要求してくることで有名です。しかしパラメータの測定方法の記載は長かったり、まとめずらかったりしてクレームに組み込むことは容易ではありません。

この場合、
図面や明細書の記載を参照することで構成要件を特定するオムニバスクレームが使えたりします。

オムニバスクレームは、EPC規則43条(6)に規定されているように欧州でも「絶対に必要な場合を除いて」認められていません。しかし、
パラメータの測定方法の記載が極めて長い場合(例えば明細書で1ページ以上)やパラメータの測定方法が図面と不可分の関係で説明されている場合は、EPC規則43条(6)に規定する「絶対に必要な場合」に該当するとして、例外的にオムニバスクレームが認められることがあります(T796/01、T0723/04)。

このため欧州特許庁において審査官からパラメータをクレームに追加することを求められた場合は、オムニバスクレームも選択肢の1つとして検討しておくとよいでしょう。

EPC規則43条(6)

クレームは、絶対的に必要な場合を除いて,発明の技術的特徴を指定する際に,明細書又は図面の引用に依拠してはならない。特にクレームは,「明細書の......の箇所に記載されているように」又は「図面の第何図に示したように」のような表現を含んではならない。

知財とは関係ありませんが、このたび私が翻訳のお手伝いをした書籍が出版されましたので宣伝させて頂きます。

この作品では、古典的生物学から最新のバイオテクノロジまでかなり網羅的に、そして豊富な図面を参照しながら分りやすく説明されています。一方でバイオテクノロジーの歴史や、著名生物学者の若かりし頃のエピソードなどが載せられていたりと、初学者であっても楽しめる内容となっています。

著者のProf. Dr. Reinhard Rennenbergは日本好きのドイツ人で、作品の中の要所にちりばめられた日本に関するコラムも読みどころです。

ご興味があれば、ぜひご一読下さい。

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