徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2014年01月

欧州特許庁は、2013年の欧州出願数は265000以上であったと発表しました。これは、2012年(257700件)と比較して2.8%の増加となります。

出願人の国籍、上位ベスト5は、以下の通りです(カッコ内は2012年と比較した変化率)。

 1.アメリカ : 64800出願(+2%)
 2.日本 : 52300出願(+1.2%)
 3.ドイツ : 32000出願(-6.3%)
 4.中国 : 22200出願(+18%)
 5.韓国 : 16900出願(+16.6%)


欧州特許庁に対しては、ミュンヘン本部以外でもベルリン支局およびハーグ支局でも応答書面等を提出することができます。このように書面の提出が可能な欧州特許庁のミュンヘン本部、ベルリン支局およびハーク支局は「欧州特許庁の提出場所」とも称されます。

ここであまり知られていませんが、欧州特許庁は提出場所ごとに休日が異なります。例えば今年の1月6日(月曜日)はミュンヘン本部では休日でしたが、ベルリン支局およびハーグ支局では休日ではありませんでした。また5月5日(月曜日)はハーグ支局では休日ですが、ミュンヘン本部およびベルリン支部では休日ではありません。

この場合、例えば応答書面の提出期日が今年の5月5日であった場合は、期限はどのように取り扱われるのでしょうか。

現地代理人の所在地がミュンヘンであれば、5月5日はミュンヘン本部の休業日ではないので、提出期日は5月5日のままであることも考えられます。

しかしEPC規則134条(1)によると、提出期日が欧州特許庁の提出場所の1の休業日に重なる場合は、期日は次の営業日まで延ばされます。つまり5月5日は、欧州特許庁の提出場所の1つであるハーグ支局の休業日であるので、仮に現地代理人の所在地がミュンヘンであっても、5月5日の期限は次の営業日である5月6日まで延長されます。

この場合、ミュンヘン在住の者にとっては、期日の5月5日は通常の営業日であるにもかかわらず、提出期限が1日延長されるのでなんだか得をした気分になります。もっとも期日が1日伸びたぐらいで喜んでいるようでは「どんな期限管理をしているんだ!」とお叱りをうけてしまいますが。。。
 

12月20日の欧州特許庁のプレスリリースで第2世代目以降の分割出願にかかる追加費用の具体的額が発表されました。ここで、第2世代分割出願とは、原出願(親出願)の分割出願(子出願)の分割出願、すなわち「孫出願」を意味します。

第2世代目以降の分割出願の追加費用は以下の通りです。
 第2世代分割出願(孫出願):210ユーロ
 第3世代分割出願(ひ孫出願):420ユーロ
 第4世代分割出願(玄孫出願):630ユーロ
 第5世代分割出願(来孫出願)以降:840ユーロ

一方で、プレスリリースには、第1世代分割出願、すなわち子出願の追加費用についてはなんら触れられていませんでした。子出願の追加費用について触れられていない以上、子出願については追加費用は発生しないと解釈すべきだと思います。しかし当該追加費用の導入の趣旨が分割出願の数を減らすことであること、および欧州特許庁が金にがめついことを鑑みると、一定数以上の子出願についても追加費用が徴収されると考えるのが普通とも思えます。

気になって欧州特許庁に問い合わせてみたところ、欧州特許庁の回答は「子出願についてはどれだけ出願しようと追加費用は発生しない」とのことでした。つまり、2014年4月1日以降であっても、親出願が審査に係属している限りは、親出願に基づいて分割(子出願)することで、追加費用がゼロの分割出願をすることができるようです。

ドイツで働き始めてから「日本弁理士がドイツでどんな仕事をしているんですか?」という質問をよく受けるようになりました。確かに欧州で資格もなく、英語が特別上手でない日本人がどんな仕事をしているのかは多くの人にとって謎であると思います。以下に私の業務について簡単にまとめてみました。

1.現在の仕事内容
(1)外内案件の中間処理
外内案件、すなわち欧州以外のクライアントの欧州またはドイツ出願の中間処理です。これが現在の私のメイン業務になります。私はまだ現地の資格を有していないので、ドイツ弁理士および欧州弁理士の指導の下に当該業務を遂行しています。顧客は様々で、日本のお客様だけでなくドイツやアメリカ、中国、インドなどのお客様も担当させてもらっています。

(2)内外案件の中間対応

内外案件、すなわち欧州のクライアントの欧州以外の特許出願の中間処理です。私の業務の中で2番目に多い業務となります。必然的といいますか、日本出願の中間処理を任されることが多いですが、日本以外にも、アメリカ、中国、インドの出願も担当させてもらってます。

(3)ドイツ出願書面の和訳
ドイツのお客様が日本に出願する場合に、和訳を指名されることがあります。またドイツ出願のウォッチングしている日本のお客様のためにドイツ語公開公報を和訳することもあります。

(4)日本語出願書面の独訳または英訳
あまり多くはありませんが、ドイツ出願を希望される日本のお客様から日本語出願書面の独訳を依頼されることがあります。また、同僚が日本語文献の訳文が必要な場合に、日本語文献を独訳または英訳することもあります。

(5)日本顧客対応
日本のお客様の窓口になったりしています。

(6)通訳
英語が得意でない日本のお客様との会議や会食のサポートをしたりもしています。

(7)ドイツ出願のドラフティング
上司の指導の下、ゼロからドイツ出願の明細書を作成することもあります。和独翻訳とは異なり、かなり時間を要してしまいます。日本語ができることと日本語明細書を書けることとが別物であると同様に、ドイツ語が出来ることとドイツ語の明細書作成を書けることとは別物であることを実感します。

(8)日本関係雑務
日本のホテルやセミナー会場の予約から日本の会社に入金の催促の電話までいろいろやります。正直、弁理士ではなくてもできる業務なので、当該雑務のために日本語ができる事務員を雇って欲しいと思う今日この頃です。

2.日本と変わった点
業務内容に関して言えば、日本で働いていたときは、明細書作成が主な業務でしたが、ドイツでは中間対応に重点がシフトしたという点で仕事内容が変化しました。また当然ながら通訳や翻訳業務も日本で働いていたときよりも増えました。

業務の質に関して言えば、日本では力強い諸先輩達の庇護の下で仕事をしていたので、自分自身に体外的な責任が求められる機会は少なかったのですが、分業と明確な責任の所在をよしとするドイツの中では自分の仕事にはモロに責任を追うことを求められます。責任を負うことは一方でストレスとなりますが、他方ではプロフェッショナルとしての良い刺激にもなります。

3.今後の展望

私はまだ欧州で代理ができる資格を有していないので、自らの名前で庁手続きをすることはできません。今後はいち早く欧州およびドイツの資格を取得し、自らの名前で仕事ができるようになりたいです。また特許だけでなく、欧州における商標および意匠の保護制度についても知識を深め、幅広いサービスを提供できるようになりたいです。

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
日本での欧州特許セミナーのトピックおよび日程が決定致しましたのでご案内申し上げます。

● トピック: 「欧州における補正の実務」
欧州特許庁は、新規事項を追加する補正に対して非常に敏感で、日本やアメリカの補正実務に慣れた方にとっては、戸惑うことも多いと思います。また欧州における安易な補正は、特許査定後の異議申立において「逃げられない罠」と呼ばれる致命的な結果を招いてしまいます。

本セミナーでは、欧州特許庁ではどのような補正が許可され、どのような補正が新規事項の追加と判断されるのか、日本の審査基準と対比しながら説明したいと思います。さらに、欧州においてより広範囲な補正を可能にするには、クレームおよび明細書をどのようにドラフティングしたらよいかについても併せて説明したいと思います。

● 日程: 2014年2月17日(月曜日)

● 時間: 18:30~20:30(講義に1時間~1時間半程度、質疑応答および名刺交換に30分~1時間程度を予定しています)

● 会場: 新宿カンファレンスセンターカンファレンス5A 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-14-11 日廣ビル5階 http://tkp-shinjuku.net/access.shtml

● 会費: 無料

● 講師: Winter Brandl特許法律事務所 長谷川寛

● 定員: 先着36名

● セミナー対象者: 主に欧州特許の権利化に関わることがある企業知財部および特許事務所の担当者の方に有用となるような情報を提供できればと思っていますが、それ以外の方でも欧州特許実務に興味のある方であれば、是非ご参加下さい。

● 参加方法: 本セミナーへの参加をご希望される方は、以下のメールアドレスまで、ご氏名、ご連絡先、ご所属先およびセミナー参加希望の旨を明記の上ご連絡下さい。

Email:KHasegawa@wbetal.de

ご不明な点がございましたらなんなりとお問い合わせください。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

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