徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2013年12月

暮れもいよいよ差し迫っていたので年内の受取は無理かなと思っていたのですが、注文していた本達が無事に届きました(左から第9版Schulte、第7版欧州特許庁審判部判例集、2013年版欧州特許条約)。

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特にSchulteは、第8版と比較してかなり厚みが増しています(左側が第8版、右側が第9版)。年始の連休中にでもどんな部分が補強されたのか確認してみたいと思います。

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これら新たな武器を携えて2014年もまたバリバリと働きたいと思います。


今年一年私のブログをご愛読頂きありがとうございました。
よいお年をお迎え下さい。

欧州特許庁は12月20日に2014年4月1日から手続料金を引き上げることを公表しました。また同時にEPC規則36条の改正に伴いアナウンスされていた第2世代以降の分割出願の出願料についても具体的な金額が発表されました。

分割出願料および主な料金の改定は以下の通りです。(カッコ内は旧料金)


 分割出願料:
  第2世代分割出願 210ユーロ
  第3世代分割出願 420ユーロ
  第4世代分割出願 630ユーロ
  第5世代およびそれ以上の分割出願 840ユーロ

 出願料:
  120ユーロ(115ユーロ)

 調査料:
  1285ユーロ(1165ユーロ)

 指定料:
  580ユーロ(555ユーロ)

 審査料:
  1620ユーロ(1555ユーロ)

 特許査定料:
  915ユーロ(875ユーロ)

 維持年金:
  3年目 465ユーロ(445ユーロ)
  4年目 580ユーロ(555ユーロ)
  5年目 810ユーロ(775ユーロ)
  6年目 1040ユーロ(995ユーロ)


・コメント

2012年に続きまたもや値上げです。最近のユーロ高を考えると日本を含めた欧州以外の出願人にとっては痛い値上げであると思います。しかも2014年4月1日の料金値上げをこの時期に発表するとは、企業の予算編成を考慮しているとは到底思えません。欧州特許庁の傲慢な一面が垣間見れる発表でした。

1.原則

ドイツにおける特許による保護範囲は、専らクレームによって決定され、明細書でさえも補助役割しか有さないことが定められています(ドイツ特許法第14条)。この原則に従い、ドイツでは審査、異議申立、無効審判の過程における出願人または特許権者の主張が保護範囲の解釈において法的束縛力を有するということはありません(BGH GRUR 07,778)。すなわちドイツでは原則、包袋禁反言は採用されていません。


2.例外

一方、同一の当事者について異議申立または無効審判と侵害訴訟とが係属している場合において、特許権者が異議申立または無効審判においてした主張を侵害訴訟において翻すことは、信義則の観点から認められません(BGH GRUR 93, 886)。すなわち異議申立または無効審判の当事者間では、禁反言の原則は採用されます。


3.例

1)禁反言が採用されない場合

 特許権者:X
 無効審判請求人:Y
 侵害訴訟被告:Z

この場合、特許権者Xが無効審判でした主張をZを被告とする侵害訴訟において翻すことが認められることもあり得ます(禁反言が採用されない)。

2)禁反言が採用される場合

 特許権者:X
 無効審判請求人:Y
 侵害訴訟被告:Y

この場合、特許権者Xが無効審判でした主張をYを被告とする侵害訴訟において翻すことは認められません(禁反言が採用される)。

「制御する」という動詞は、英訳において多くの場合「control」と訳されます。
では独訳ではどうでしょうか?つい英語の「control」に倣って「kontrollieren」と訳してしまいがちですが、「kontrollieren」は、ドイツ語では「管理する」または「支配する」という意味を有し、「制御する」とはニュアンスが異なるので適切ではありません。

独訳においては、「制御する」は正しくは「steuern」または「regeln」と訳されます。ここで注意すべきは制御工学分野におけるドイツ語においては、「steuern」と「regeln」とは、明確に使い分けられているという点です。
以下、「steuern」および「regeln」の制御工学における意味について説明します。


・Steuern
ドイツの国家規格であるDIN規格によると、「steuern」とは、あるシステムにおいて1または複数の入力が、システム特有の法則に従って出力に影響を与える工程を意味します。また「steuern」で特徴的なのは、そのオープンまたはクローズドの作用経路であり、この作用経路では入力値によって影響された出力値が、再び同じ入力値を介して自身に作用することはありません。

わかりずらいので例を用いて説明します。

「steuern」の例として最も簡単なのがスイッチによる照明のオン/オフの切替です。このシステムではスイッチがオンにされるという入力によって照明が点灯されるという出力が達成されます。このとき当該システムでは照明の状態(出力)とスイッチの状態(入力)とを比較するということは行いません。この場合、照明の状態は「steuern」されています。


・Regeln
DIN規格によると、「regeln」は、あるシステムにおいてある値を継続的に計測し、計測値を規定値と比較し、計測値が規定値からずれたときに、計測値を修正する工程を意味します。

「regeln」の例として挙げられるのがエアコンです。エアコンではまず希望の温度(規定値)を設定します。そしてエアコンは実際温度(測定値)を測定し、設定温度と比較し、実際温度が設定温度からずれているときは、温風または冷風を供給します。このシステムでは測定値と規定値とが継続的に比較されます。この場合、温度は「regeln」されています。

これまでドイツ特許庁では日本特許庁や欧州特許庁のようなオンライン包袋閲覧は整備されておらず、包袋閲覧をするには書面による請求が必要でした。しかしドイツ特許庁の発表によると2014年1月7日からオンラインで登録特許/特許出願および登録実用新案/実用新案出願の包袋の閲覧が可能になるとのことです。


1.2014年1月7日からオンライン閲覧の対象となる特許/特許出願および実用新案/実用新案出願は以下の通りです。

 ・2013年1月21以降に包袋閲覧請求がなされた出願。
 ・2013年1月21以降に公開された登録特許および登録実用新案。
 ・2013年1月21以降に公開された特許出願および実用新案出願。


2.オンライン閲覧が可能となる書面は以下の通りです。

 ・出願書面・発明者掲載・調査請求書および審査請求書
 ・調査報告書
 ・書誌的事項
 ・オフィスアクション
 ・オフィスアクションに対する応答書面
 ・口頭審理の記録
 ・拒絶査定通知
 ・審判請求書
 ・特許査定通知
 ・異議申立請求書
 ・異議申立の参加人によって提出された書面
 ・異議申立における口頭審理の記録
 ・異議申立における決定・訂正請求書および取消請求書


3.感想

長年ヤルヤル詐欺であったドイツ特許庁によるオンライン包袋閲覧もいよいよ具体的に実行に移るようです。これは大きな進歩だと思います。これまでの書面による包袋閲覧の請求では、包袋閲覧の請求がなされたことが包袋に記録されてしまうため、特許権者および出願人に悟られることなく包袋閲覧の請求をすることが不可能でしたが、オンライン包袋閲覧では当該記録が残らないので今後は特許権者および出願人に悟られることなく包袋閲覧の請求をすることが可能になります。

今後の希望として、2013年1月21以降の登録特許および特許出願だけでなく全ての登録特許および特許出願のオンライン包袋閲覧、さらにはオンラインでの情報提供が早期に実現されることを願います。

 

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