徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2013年11月

日本のあるメーカーの知的財産部における知財部員(以下「部員」)と知財部長(以下「部長」)との会話:


部員:「部長!大変です。ドイツのX社からうちの商品AがX社のドイツ特許Bを侵害をしているとの警告が届きました。」

部長:「ドイツのX社?はて、聞いた事がない会社だが。。しかもわが社は商品Aを日本国内でしか製造・販売していないぞ。なんでドイツ特許Bの話が出てくるんだ?」

部員:「ドイツのY社のカイザーさんをご存知ですか?」

部長:「ああ、あの日本好きのドイツ人で日本に遊びにきては、わが社の商品Aをいつも大量に購入していくドイツのY社のカイザーさんのことか?この間、六本木のクラブで接待したらえらいご機嫌だったそうじゃないか。そのカイザーさんがどうしたんだ?」

部員:「・・・(六本木はどうでもいい・・・)・・・そのカイザーさんが勤めるY社なんですが、ドイツで商品Aを販売しているらしいんです。」

部長:「それなら特許侵害をしているのはY社だろ。ドイツで製造販売しているならまだしも、日本でしか製造販売していないうちには関係ない事だから無視しておきなさい。」

部員:「それが調べてみたところ無視するというのは問題があるようです。。。。」

部長:「なに!?」

部員:「ドイツ連邦裁判所の判決によると、ドイツでは特許侵害者には、悪意で第三者の特許権侵害行為を支持した者も含まれ、権利行使の追及を受けるそうです(判例1参照)。」

部長:「日本の民法719条の共同不法行為の規定と似たようなものか。しかしわが社はドイツ特許Bの存在など知る余地も無かったわけだし、悪意でY社の行為を支持したわけじゃないぞ。」

部員:「おっしゃるとおりです。現在までわが社がY社に商品Aを販売していた行為については、なんら問題がないかと思います。」

部長:「ふむ、じゃあ何が問題なんだ?」

部員:「問題はわが社がX社の警告によってY社がX社の特許を侵害しているという事実を本日知ってしまったことです。こうなると今後わが社がY社に商品Aを販売し続ける行為は、悪意で特許侵害行為を支持するものになってしまうそうです。」

部長:「なるほど、そうするとわが社が権利侵害者になってしまうということか。。。けどわが社の拠点は日本だぞ!それでもドイツにおける第三者の行為に責任を持たないといけないのか?」

部員:「ドイツの最近の判例によりますと、この共同不法行為の原則を在外者に当てはめることを支持した判決があるそうです(判例2参照)。したがって拠点が日本であろうとドイツ特許Bに基づいて権利行使の追及を受けてしまうことはありうるかと。。。」

部長:「そうか。。ということは今後カイザーさんに商品Aを売るとX社から権利行使を受けてしまう恐れがあるということか。。。今後カイザーさんに限らずドイツ人を六本木で接待する際には注意が必要だな。」

部員:「・・・・(だから六本木はどうでもいい・・・)・・・・」


参考資料
判例1:ドイツ連邦裁判所判決 Xa ZR 2/08
判例2:マンハイム地裁判決 Az. 7 O 139/12

欧州特許庁が提供する特許検索データベースEsp@cenetでは、公開番号だけでなく出願番号からでも文献を検索することが可能です。例えば国際出願番号がPCT/JP2001/XXXXXである文献は、Esp@cenetNumber Searchの欄にWO2001JPXXXXXと入力することで入手することができます。すなわち国際出願番号を

WO +
出願西暦 + 国コード + 西暦後の連続番号

に変換することで公開文献を入手することができます。

しかし国際出願番号からEsp@cenetで検索する場合、国際出願番号の西暦後の連続番号の桁数(5桁または6桁)によって入力方式が異なります。


・国際出願番号の最後の桁数が5桁である場合:

この場合は、国際出願番号を上述した変換方法の通り行えば問題ありません。


例:
 国際出願番号:PCT/IB2007/01010
 Esp@cenetの入力番号:WO2007IB01010


・国際出願番号の最後の桁数が6桁である場合:
この場合、国際出願番号の変換の際に西暦後の連続番号の最初のゼロを除かないと文献が得られません。

例:
 国際出願番号:PCT/JP2011/001234

 Esp@cenetの入力番号:WO2012JP01234



欧州特許庁における分割出願では、分割出願の出願時に、親出願において指定されているすべての締約国が分割出願においても指定されたものとみなされます(EPC76条(2))。逆にいうと、分割出願の出願時に、親出願において指定されていない締約国は、分割出願において新たに指定することはできません。

ここで気になるのが、親出願が欧州においてみなし全指定制度が導入された2009年4月1日以前に出願され、分割出願が2009年4月1日以後に出願された場合の指定国の取り扱いです(モデルケース1)。

欧州では2009年4月1日までは、指定したい締約国を選択し、指定された締約国の数に応じた指定料金を支払っていましたが、2009年4月1日からは指定料金が一律になり(2013年11月現在で555ユーロ)、全ての締約国が指定されたものとして取り扱われています。そしてこの一律指定料金(555ユーロ)は、2009年4月1日以降になされた分割出願にも適用されます。

また、みなし全指定制度の導入後において親出願と分割出願との間の期間に欧州特許条約に加盟した締約国はどのように取り扱われるのでしょうか(モデルケース2)。

以下、2つのモデルケースを参照して、上記特殊な場合における分割出願の締約国について説明します。


モデルケース1

親出願
 出願日:2009年2月(みなし全指定制度の導入前
 指定国:ドイツ、イギリス、フランス

分割出願
 提出日:2012年11月(みなし全指定制度の導入後

この場合、分割出願ではEPC76条(2)の原則の通りドイツ、イギリス、フランスしか指定できません。一方で、分割出願にはみなし全指定分の指定料金(555ユーロ)が要求されます(Guideline Part A Chapter IV 1.3.4)。このように指定は3カ国しかできないのにも関わらず、みなし全指定分の指定料金が要求されるという非常にアンフェアな運用となっています。


モデルケース2

親出願
 出願日:2010年1月(みなし全指定制度の導入後
 指定国:みなし全指定

分割出願
 提出日:2013年11月

備考:2010年3月2日にアルバニアが欧州特許条約に加盟
   2010年8月3日にセルビアが欧州特許条約に加盟

この場合もEPC76条(2)の原則が適用されます。このため分割出願ではアルバニアおよびセルビアを指定することができません。



1.Early Processingとは?


PCT出願を欧州特許庁に早期移行した際、移行期限経過に先立って審査を開始させるための手段です。


2.なぜEarly Processingが必要か?

PCT出願の場合、欧州特許庁には、優先日から31ヶ月以内に移行しなければなりません(EPC規則159条)。しかし移行手続きは移行期限の31ヶ月前であってもすることは可能です。このように移行期限前に以降手続きを済ませることを早期移行とも称します。

このとき、早期移行したのだから当然審査も早期に開始されると考えるのが普通に思えますが、欧州特許庁では、移行期限が経過するまで審査を開始することが禁止されています(欧州特許庁によるEarly Processingに関する通知を参照)。

ここで、注意すべきは仮に欧州特許庁への移行と同時にPACEやPPHを申請したとしてもこの禁止が解除されないことです。この禁止は唯一Early Processingの申請によって解除することができます。


3.Early Processingの費用

Early Processingの申請自体は庁費用がかかりません。しかしEarly Processingの申請の要件として欧州特許庁への移行手続の要件を満たすこと、すなわち出願費用や調査費用等が支払われることが要件となります。


4.Early Processingの効果

・欧州特許庁にとって国際段階が終了する(欧州特許庁において方式審査が開始される)。

・分割出願をすることが可能となる。

・国際出願を取り下げても、欧州特許庁の国内段階には影響を及ぼさなくなる。


5.まとめ

上述のように早期移行した場合、Early Processingを申請しなければ審査の開始時期を早めることはできません。したがって早期権利化を意図して早期移行をしたのであれば、Early Processingも申請すべきです。

通常の欧州代理人であれば早期移行の際に、「Early Processingを申請しますか」と質問してきますが、何も言ってこない代理人もいるので注意が必要です。


関連記事:
早期審査以外の審査期間短縮手段 その1 EPC規則161条の権利の放棄

就職面接においてアピールする事項は、能力や実績など個人個人で大きく異なります。しかし、ドイツで就職を試みる日本人であれば面接において、少なくとも以下の3つの事項については普遍的にアピールしておくべきです。


1.長期滞在の意図があること


ドイツの特許事務所が日本人を雇うにあたっての一番の懸念事項は、雇った日本人が長く働いてくれるかです。日本人を雇って日本向けサービスを開始したものの、すぐに辞めれては、空いた穴の代わりを探す労力が膨大になるからです。

したがってドイツには長期に亘って滞在する意思があること、すなわち会社で長期に働く意思があることをアピールすべきです。一方で、ただ漠然と「長期に亘って滞在したいです!」とアピールしても信憑性がないので、例えば仕事に関連した資格を取りたいので少なくとも5年は滞在したいとか、子供にドイツで教育を受けさせたいので子供の教育が終わるまでは滞在したいとか、長期滞在を希望する意図についてまで説明できればなおよいと思います。


2.ドイツ語を学ぶ意思があること


特許事務所で働くドイツ人は英語が上手です。このためマンツーマンの状況である限り英語であっても事務所内でのコミュニケーションは問題なく取れます。

しかし、従業員同士が複数で情報交換する場合、使用言語は必然的にドイツ語になります。このため複数の従業員と積極的に情報交換したり、より良好な関係を築くにはドイツ語が必須になります。したがって、現時点ではドイツ語の知識が不十分でもドイツ語を勉強する意思があることをアピールすべきです。

例えば、ドイツ語検定4級であればドイツ語知識がゼロからでも60~100時間ぐらい勉強すれば取れるので、取っておけばよいアピール材料になります。また、面接までには、挨拶および簡単な自己紹介ぐらいはドイツ語でできるようになっておいたほうがよいでしょう。


3.日本で同僚および顧客と良好な人間関係を築けていたこと

ドイツの特許事務所が日本人を雇う主な目的は、日本の顧客とのコミュニケーションを円滑にし、良好な関係を築くためです。このため日本で同僚や顧客と良好な関係を築けなかった日本人は、雇うには不適切になります。

したがって面接では前の会社や顧客についてはネガティブなことは言わず、関係が良好であったことをアピールすべきです。顧客や雇い主からの推薦状などがあれば、関係が良好であったことをアピールするよい材料になります。


まとめ


いかがだったでしょうか。本記事は主にドイツの知財業界に就職を希望する人向けに書きましたが、上記3つの事項は知財業界だけでなく多くの業界に共通すると思います。これから面接という方に参考になればと思います。

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