徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2013年10月

欧州およびドイツではクレーム数が一定以上である場合、クレーム費用を追加で納付することが要求されます。具体的には欧州ではクレーム数が15超で ある場合、超過クレームごとに225ユーロ要求され、ドイツではクレーム数が10超である場合、超過クレームごとに30ユーロ要求されます。


当該クレーム費用は、出願時または移行時に超過クレームが存在しなかったとしても、審査過程の補正によって超過クレームが発生した場合は納付が求められま す。しかしながら、このように事後的に超過クレームが発生した場合、クレーム費用の納付時期は欧州特許庁とドイツ特許庁とで異なるので注意が必要です。


欧州特許庁の場合:

欧州特許庁では、事後的に超過クレームが発生した場合、クレーム費用の納付時期は、EPC規則71条(3)(特許査定予定)の通知に指定された期間となって います(EPC規則71条(6)参照)。したがって欧州特許庁では、クレーム数が審査過程で一時的に超過クレームが発生したとしても、その後、クレームを 削除する補正をし、EPC規則71条(3)の通知の際に超過クレームが存在しない場合は、追加のクレーム費用を支払う必要はありません。


ドイツ特許庁の場合:

一方、ドイツ特許庁は、事後的に超過クレームが発生した場合、その都度追加のクレーム費用を納付することを要求しています。より正確には、超過クレームを追加する補正をした後から3ヶ月が追加クレーム費用の納付期限になります(Hinweise zu Gebühren in Patentsachen参照)。またドイツ特許庁では、事後的に超過クレームが発生した後にクレームを削除し、超過クレームを削除したとしてもクレーム費用は返還されません。

ドイツでは、ドイツ特許庁が発行する審査基準の内容がスカスカのため実務にはほとんど参照できません。そのかわり“Patentgesetz mit EPÜ Kommentar”と呼ばれる基本書が実務では重宝されます。“Patentgesetz mit EPÜ Kommentar”は、本書の著者の一人であり、元欧州特許庁審判部の審判長および元ドイツ連邦特許裁判所の裁判官であるDr. Rainer Schulteに因んで“Schulte(シュルテ)”と称されています。

正面から見たSchulteはこんな感じです。
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横からはこんな感じです。
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内容はドイツ特許法の全条文1条から146条までが、判例や学説を参照したり、欧州特許条約との対比をしたりしながら順に解説されています。 日本で言うところの青本と吉藤をミックスさせたような内容でしょうか。判例の要点が整理されていたり、欧州特許条約との差が明記されていたりなどと、かなり使い勝手がよい本です。

Schulteはドイツアマゾンから購入可能ですが、残念ながら英語版は存在しません。

英語やドイツ語の文献では、X/Yというように単語と単語 との間にスラッシュ記号(/)を挿入した表現がよく見られます。この場合、単語と単語との挿入されたスラッシュ記号(/)は、orと解釈すべきなのでしょ うか、andと解釈すべきなのでしょうか。ここでスラッシュ記号(/)は、ドイツ語と英語とで若干意味が異なるので注意が必要です。


1.英語での意味

Oxford Dictionariesによると、スラッシュ記号(/)はalternative(二者択一から選択すべきもの)を表現、すなわち「or」を意味するようです。このため英語ではX/Yは、いずれか一方が成立すると、他方が成立しない関係であるXorYを意味し、両者が成立するXandYは含みません。

注意:しかしながら実際は英語でも、スラッシュ記号(/)がorだけでなくandのニュアンスを明らかに含む場面もよく見かけます。英語においてスラッシュ記号(/)が実際にどのような意味で使われているかは、文献全体の内容に照らし合わせて判断する必要があります。


2.ドイツ語での意味

Die amtliche Regelung der deutschen Rechtschreibung(公的ドイツ語スペル規則)第106条によると、スラッシュ記号(/)は「or」の意味も含み、かつ「and」の意味を含むことが 明示されています。このためドイツ語ではX/Yは、XorYおよびXandYの両方を意味します。

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