徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2013年07月

2013年7月5日、ドイツ特許法改正法案がドイツ連邦参議院を通過しました。これによりドイツ特許法が改正されることが確定しました。改正法のほとんどは、2014年の春に施行されるとのことです。

主な改正点は以下の通りです。


1.英語・フランス語の出願書類についての翻訳文の提出期限が出願後12ヶ月まで延長。

2.出願審査前の調査におけるサーチレポートの内容に特許取得見込みの可能性に関する説明が追加。出願審査前の調査の費用が50EUR値上げ。

3.審査段階において聴聞の申請があった場合の聴聞の義務化。

4.異議申立における聴聞を原則を公開。

5.異議申立期間を3ヶ月から9ヶ月へ延長。

6.オンラインファイル閲覧についての法律の追加。2013年の秋からオンラインファイル閲覧が段階的に開始される予定。

7.ユーザーとドイツ特許庁との間の連絡において要求されている電子署名の手続の簡素化。


参考サイト:http://www.dpma.de/service/e_dienstleistungen/newsletter/newsletter4_13/index.html

クラウン独和辞典によると、「beziehungsweise」の和訳は、「または、もしくは、あるいはむしろ、場合によっては」となっています。確かに日常会話においては「beziehungsweise」は「または(oder)」の同意語として用いられる場合が多いので、クラウン独和辞典ように訳しても問題ありません。しかしながら、特許および法律分野においては、「beziehungsweise」と「oder」とは異なる意味を有するので注意が必要です。

(1)例えば: A und B sind mit X oder Y verbunden. (AおよびBはX oder Yと接続される)という文は、

・AがXまたはYに接続され、かつ
・BがXまたはYに接続されることを意味します。

すなわちこの場合、AがYに接続、BがXに接続される可能性を含みます。したがってこの場合「oder」をまたはと訳しても問題ありません。

(2)他方で: A und B sind mit X beziehungsweise Y verbunden. (AおよびBはX beziehungsweise Yと接続される)という文は、

・AがXに接続され、かつ
・BがYに接続されることのみを意味します。

すなわちこの場合、AがYに接続、BがXに接続される可能性を含みません。したがってこの場合「beziehungsweise」を「または」と訳してしまうと原文とは意味が異なってしまいます。この場合、「AはXに接続され、そしてBはYに接続される」が正しい和訳の例となります。

まずは、欧州特許庁のホームページからPatentresisterのデータベースにアクセスします。そしてapplication number または publication numberの欄のいずれかに維持状況を調べたいEP特許の番号を入力します。そうしますと、当該EP特許に関する情報が、以下のように開示されます。 


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そして赤矢印で示された「Legal status」をクリックします。そうすると次のようなページが開示されます。


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こ こで注目すべきは、Designated contracting statesの項目に列挙された加盟国の国名コードとその列に記載された情報です。例えばドイツ(DE)の列には、何も記載されていません。これはEP特許がまだドイツで生きていることを意味します。一方でスペイン(ES)の列には「Lapse: 30.12.2012」と記載されています。これは2012年12月30日にEP特許がスペインにおいて効力を失ったことを意味します。

日本と同様、ドイツでも第三者が権限無く登録商標と同一または類似の商標を指定商品・役務と同一または類似の商品・役務に使用する行為は侵害を構成し、商標権者は差止請求権(Unterlassungsanspruch)に基づいてその侵害の停止または予防を請求することができます(ドイツ商標法第14条)。

一方で、既存の登録商標と同一または類似の商標を指定商品・役務と同一または類似の商品・役務について商標出願(以下「侵害商標出願(Anmeldung einer rechtsverletzenden Marke)」とも称する)をする行為自体は、商標の使用に該当しません。したがって侵害商標出願自体は日本と同様に商標権の侵害するとは解釈されません。しかしドイツでは商標出願は、特段の事情がない限り将来の使用を意図するものであることから、侵害商標出願は侵害のおそれ(Erstgebehrungsgefahr)を構成すると解釈されます(I ZR 151/05)。このため商標権者は、侵害の予防のために差止請求権に基づいて侵害商標出願の取り下げまたは放棄を請求することができます(I ZR 151/05)。

このような侵害商標出願は、ドイツ商標法の下では商標権者が取下・放棄請求をするまでもなく通常、審査段階で弾かれるので(ドイツ商標法第9条)、ドイツにおいて商標権者が侵害商標出願の取下・放棄請求をすることはまずありません。

一方で、共同体商標(Community Trademark)の場合は、商標出願に係る商標および指定商品・役務が既存の登録商標と同一または類似であることは不登録理由とならないので、異議申立がない限り侵害商標出願であってもそのまま登録が認められます。この場合、商標権の差止請求権に基づく侵害商標出願の取下・放棄請求が異議申立よりも安価な場合があるので、商標権者は、異議申立に代えてまたは異議申立と同時に侵害商標出願の取下・放棄請求をすることがあるそうです。

欧州ではパラメータは不明確(EPC第84条)であるとして指摘される場合がよくあります。欧州では請求項が主にパラメータによって特徴付けられる場合、以下の要件を満たすことが求められるので注意が必要です。

1.当該パラメータ以外で発明を適切に特定することができないこと(T94/82)。

2.当該パラメータが当該技術分野において通常のパラメータであり、明細書の示唆または客観的な手順で明確かつ確実に特定することができること。例えば当該パラメータがJISなどで定められた方法によって特定できる場合は当該要件を満たします(T94/82)。

3.当該技術分野においてパラメータが通常でない場合、すなわちJISなどの標準化された手法でなく発明者独自の手法でパラメータが得られた場合、原則として不明確と指摘されます。しかし出願書面全体から当業者がパラメータの正確な意味を困難なく理解できることが明らかであり、先行技術との間で意味のある比較ができる場合は、当該パラメータは許可されます(T231/01)。

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