徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2013年06月

欧州特許庁のEspacentは、世界中の公開特許公報が検索できたり、パテントファミリーの確認ができたりと、かなり便利なツールで日本でも多くの特許関係者が愛用していると思います。

Espacentでは、もちろん日本語公報も検索できます。日本語の公開公報を検索するには、原則JPの後に日本の公開番号をハイフン無しでEspacentのSmart Searchの欄に記入すれば検索できます。

例えば日本語公開公報の番号が、特開2001-234567である場合、「JP2001234567」と入力すればよいです。

一方で日本語公開公報の番号が日本の元号(昭和や平成)を含む場合は、若干注意が必要です。この場合、単にJPの後に日本の公開番号を入力しても希望の文献 はヒットしません。日本語公開公報の番号が日本の元号を含む場合、昭和であれば「S」、平成であれば「H」をJPの後に追加します。さらに、元号が一桁の 場合は、数値の前に「0」を追加することが必要です。

例えば特開平4-56789の場合、「JPH0456789」と入力する必要があります。

少し前までは、特開平4-56789の場合、「JP45678」でも検索できたような気がしたのですが、欧州特許庁が入力方式を変更したのでしょうか。どなたかご存知の方がいらっしゃいましたらご教示下さい。

まずは、ドイツ特許庁のホームページからドイツ特許のPatentresisterのデータベースにアクセスします。データベースには色々ありますが、検索が簡単なビギナー用データベース(https://register.dpma.de/DPMAregister/pat/einsteiger?lang=en)を用いるのが無難です。

データベースにアクセス後、検索欄のFiling number / publication numberの欄に生死情報を調べたい特許または出願の公開番号を入力し、Start Searchをクリックします。すると当該特許または出願に関する情報が、以下のように開示されます。


Bild3

ここで特許の生死を確認する際に注目すべきは以下の3つの項目です。

まずStatus:ここでは、特許または出願の生死情報が確認できます。上記図の例では項目がPending/in forceとなっているので、特許または出願が生きていることをが分ります。一方、特許または出願が死んでいる場合は、Not pending / lapsedと表示されます。

次にDate of publication of grant:ここでは特許が付与されたか否かが確認できます。まだ審査段階の出願には当該項目はありません。上記例では当該項目があるので、特許が付与されていることが確認できます。

最後にDue date:ここでは次の年金納付期限が確認できます。上記例ではDue dateの欄にJan 31, 2014と記載されているので、少なくとも2014年1月31日までは、特許または出願が生き続けることが分ります。

ドイツ特許庁による2012年アニュアルレポートが公開されました。レポートによると2012年にドイツ特許庁に対してなされた特許出願の件数は、61311件と、2011年の特許出願の数(59607件)と比較して2.9%の増加となりました。

特許出願全体における日本からの特許出願が占める割合は、ドイツ、アメリカからの出願に次いで第3位となり、例年の地位を保持しました。また、日本からの特許出願の件数は、 3676件と、2011年(3014件)と比較して約22%の増加となりました。増加率だけを単純比較すると、ドイツにおける当該増加率(22%)は、同時期の日本からの欧州特許出願の増加率(約10%)の約2倍になります。

また、2012年に異議申立を含む審査が完了した特許出願は29306件であり、そのうちの11324件に特許が付与されました。換算すると2012年の特許査定率は38.6%となります。

参考資料:2012年アニュアルレポート

先日の日・独・欧3特許庁の比較をした記事では、「反論、異論を歓迎いたします」と謳いながらも、説明が皆無のためコメントしようが無いと指摘頂きましたので、補足説明を致します。


1.進歩性の基準

日本は、少なくとも数年前までは、阻害要因がなければ進歩性がないとする恐らく世界で最も厳しい進歩性の基準を採用していたと思います。現在その基準は、い くらか緩やかになったものの、それでも欧州、ドイツと比較すると以前として高い進歩性の基準を維持していると思います。一方で欧州ではプロブレム・ソルー ションアプローチという発明の課題や効果を重視する進歩性の基準が採用されています。この基準は、阻害要因に基づく基準から比べるとかなり緩やかです。ドイツ特許庁は、名目上プロブレム・ソルーションアプローチを採用していますが、実際は阻害要因寄りの基準を適用してくる審査官もいるので、進歩性の基準の厳しさとしては、欧州と日本の中間辺りに位置すると思います。


2.補正の自由度

近年の欧州での実務を経験された方なら実感されていると思いますが、現在の欧州では従属項のクレームアップを除いて、 全ての補正が新規事項の追加と判断される恐れがあります。ドイツは、数年前までは、日本と同レベルでの補正が認められていましたが、近年欧州寄りの判断基準を採用し始めたらしく、補正による新規事項に追加に対して段々と厳しくなってきました。それでも少なくとも現時点では、ドイツでは欧州よりも 補正が認められやすいと言えます。


3.記載要件

日本も記載要件の厳しさでは、世界トップレベルにあると思い ますが、欧州でも近年の「Raising the Barイニシアチブ」の採用に伴い記載用件がかなり厳しくなりました。ただ、日本だと記載要件に不備があっても補正によって是正しやすいのですが、欧州では、上述したように補正に対して大変厳しいので、記載不備を事実上是正できず、新規性、進歩性の議論をする前に出願が拒絶されてしまうこと があります。このため記載要件に関しては、欧州のほうが日本よりも厳しいと評価しました。一方で、上記2国と比べると、ドイツはかなり緩やかであるといえ ます。


4.ユーザビリティ

当該項目では、「拒絶理由通知の審査官の見解の妥当性(見解の妥当性)」および 「審査官が出願人、代理人と協力してよい権利を作ろうとする姿勢(協力姿勢)」を評価しました。私の個人的な見解では、「見解の妥当性」および「協力姿 勢」に関しては日本の審査官が世界一ではないかと思います。日本の拒絶理由通知では審査官があまりにも見当違いな見解をすることは稀ですし、どのような補 正をすれば特許になるのかについて示唆が豊富に示されます。

一方、欧州のオフィスアクションでは、説明は詳細ではあるものの妥当とはいえない見解が散見されます。また、「出願を潰すこと」および「出願人に手間を取らせる こと」をモットーとしているとしか思えない審査官に当たること多いので「協力姿勢」という点でも低く評価しました。ドイツは「見解の妥当性」については欧州と同レベルであるものの、欧州のような出願人の足を引っ張る姿勢が感じられないので、欧州よりも上の評価としました。



ドイツではオフィスアクションに対する応答期間は、理由が正当であれば、延長請求によって、原則何度でも延長することができます。また一回目の延長請求は理由は、詳細な理由を説明しなくとも原則認められます(ドイツ審査基準、チャプター3.5)。さらに延長する期間については自由に設定することができ、例えば1年の延長申請が認められることもあります。

また延長請求に庁費用はかかりません。

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