徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

2013年05月

1.進歩性の判断基準
厳しい>>>>>>>>>>>>>>緩い
日・・・・・・・・・独・・・・・・・・・欧

2.補正の自由度(新規事項に対する厳しさ)
自由度が低い>>>>>>>>>>>>>>自由度が高い
欧・・・・独・・・・・・・・・・・・・・日

3.記載要件の厳しさ
厳しい>>>>>>>>>>>>>>緩い
欧・日・・・・・・・・・・・・・・・・・独

4.ユーザビリティ(審査官のサービス等)
 低い>>>>>>>>>>>>>>高い
欧・・・独・・・・・・・・・・・・・・・日


反論、異論を歓迎いたします。

ドイツ特許庁の審査部による拒絶理由通知に対する応答期間は、通常4ヶ月です。しかし、例えば、精査すべき文献の量が膨大だったり、追加実験が求められることなどにより応答に時間を要すると審査官が判断した場合、審査官の職権で最高で12ヶ月の応答期間が設定されます(例えばドイツ審査基準、チャプター3.5参 照)。

このように、4ヶ月よりも長い応答期間を有する拒絶理由通知は、応答に時間を要すると審査官が判断したものらしいのですが、中には「なぜこの簡単な拒絶理由通知に対してこんなに長い応答期間が?」と首を傾げたくなる案件も散見されます。あるドイツ弁理士によると、拒絶理由通知の発送まで審査官の都合で時間がかかってしまった場合、出願人に短い応答期間を設定する後ろめたさから、審査官は長い応答期間を設定するそうです。

確かにそのような傾向があるがあるようにも思えます。真偽のほどは定かではありませんが。。。

少し前の話になりますが2012年11月にドイツ連邦裁判所(ドイツの最高裁)がES細胞に関する特許の有効性について判決(X ZR 58/07)をだしました。

本ケースは、 まずドイツでグリーンピースがES細胞に関する特許(DE19756864)に対して無効審判を請求し、 ドイツ連邦裁判所が欧州司法裁判所に「ヒトの胚」の定義問題等について付託した案件です。 2011年10月18日に欧州司法裁判所が付託された問題について決定(C-34/10)を出し、それに基づき ドイツ連邦裁判所が最終判決を出しました。

欧州司法裁判所では、ES細胞に関する特許性についてかなり厳しい決定がなされましたが、今回のドイツ連邦裁判所は、当該ES細胞に関する特許の有効性を制限付で認めるものでした。 判決の概要は以下の通りです。

a)ヒトの胚から入手したES細胞に関する特許は、ドイツ特許法第2条(2)(公序良俗違反)の規定に抵触する。
b)しかし、ドイツ特許法第2条(2)(公序良俗違反)の規定は、ヒトの胚の破壊する以外の手法で入手したES細胞に関する特許を禁止するものではない。

このため当該特許は、「ヒトの胚を破壊することで得られたES細胞を使用しない」というディスクレーマーを加えることで有効性が認められました。 ここで、「ヒトの胚を破壊せずに得られたES細胞」の具体例として、ドイツ連邦裁判所は、体外受精プロセスで得られる発生過程が停止してしまった胚から得られるES細胞を挙げています。すなわちドイツ連邦裁判所の解釈によれば、「ヒトの胚」とは、ヒト成体へ成長する能力を持った組織体のことであり、発生過程が停止してしまった胚のように当該能力を失った胚は、「ヒトの胚」には該当しないとのことです。


日本でも正月、ゴールデンウィーク、お盆などの休暇シーズン中は、代理人と連絡がつき難いように、欧州およびドイツでも、代理人に連絡がつき難い休暇シーズンがあります。欧州およびドイツ特有の休暇シーズンとして代表的なものが以下に示すキリスト教の祭日に関わる休暇シーズンです。以下のシーズン中は、代理人が長期休暇を取っていることが多く、急ぎの依頼をしても受け付けられないことがあるので注意が必要です。

 1.クリスマス(12月末)
言わずと知れたキリスト教における最も重要なお祭りです。日本と異なり24日、25日および26日は欧州では、国民の休日です。また学校の冬休みと重なるため長期休暇を取るものも多いです。日本は年末で何かと忙しい時期ですが、欧州の代理人とは最も連絡がつきにくい時期と言えます。

2.イースター(3月末~4月中旬)
キリストの復活を祝う祭日です。学校の春休みに重なるため長期休暇を取るものも多いです。またイースターは、カレンダー上で特定の日程に固定されているわけでなく、年によって時期が3月末から4月中旬の間で変動します。日本の年度末と重なることもあるので注意が必要です。

 3.降臨祭(5月中旬~6月初旬)
精霊の降臨を祝う祭日です。イースターと同様にカレンダー上で固定されているわけではなく、年によって時期が5月中旬から6月初旬の間で変動します。ドイツのいくつかの州では学校も2週間ほど休みになるので、それに合わせて長期休暇を取ることもあります。

日本国特許法と同様にドイツ国特許法も直接侵害だけでなく間接侵害を禁止することによって特許発明の充分な保護を図っています。


しかし、ドイツ国特許法が規定する間接侵害は、日本の間接侵害と比較して以下の相違点を有しています。


1.常に主観的要件が要求される

日本ではいわゆる専用品の場合は、第三者の主観的要件は求められず、客観的な要件のみで間接侵害が成立します(日本特許法第101条第1号、第4号)。これに対してドイツでは、常に主観的要件が求められます。

具体的には、手段が発明の本質的な特徴に関係する場合(ドイツ特許法第10条(1))、当該手段が発明の使用にあてられることを第三者が知っているか、知っていることが状況から明らかであること、が求められます。

また、手段が一般的に市場で入手可能な場合(ドイツ特許法第10条(2))、第三者が手段の譲受者に意図的に侵害行為をさせていることが求められます。 (2014年10月27日 削除)

コメント:間接侵害は、主観的要件を立証できなくとも「当該手段がその発明の実施に適したものであり、かつ、そのように意図されて いること」が状況からみて明白である場合にも成立します。したがって主観的要件が常に要求されるとした当該説明は誤りですので削除させて頂きます。不正確な情報を掲載し申し訳ありませんでした。


2.禁止される行為が手段の提供あるいは提供の申出に限られること

日本の間接侵害では、譲渡以外に、生産、輸入、所持も禁止の対象となりますが(日本特許法第101条各号)、ドイツでは禁止できる行為は、提供あるいは提供の申出に限定されます(ドイツ特許法第10条(1))。したがって、生産、輸入、所持等の行為は間接侵害に基づいて禁止することはできません。



3.国内での使用予定を要件としていること

日本では、対象物が国内で用いられようと海外で用いられようと間接侵害の成立には関係ありません。しかしドイツでは、対象物が「ドイツ国内における発明の使用のため」に用いられることが要件とされています(ドイツ特許法第10条(1))。したがって、対象物を国外で用いることを前提としている場合には間接侵害は成立しません。

ここで、この「ドイツ国内における発明の使用のため」という要件は、あたかもいわゆる従属説を前提とするようにも思われますが、ドイツでは従属説が否定され独立説が採用されています。この「ドイツ国内における発明の使用のため」という要件は、実施がドイツ国内で行われる「予定」があることを要件とするものであって、実際に実施が行われたことを定めるものではありません。

例えば、対称物の譲受人がドイツ国外にのみ生産手段を有する場合、「ドイツ国内における発明の使用のため」という要件が満たされないと判断されます。


参考図書:Schulte

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