徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

知財実務とは関係ありませんが。。。。

以下のミュンヘンの特許事務所で日本人の特許技術者または弁理士を募集しています。

http://www.isarpatent.com/ja/jobs_on_offer_jp.html


1.時期的要件
出願が庁に継続中ならいつでもできます。しかし審査手続きの効率化の観点からEPOは以下の時点に申請することを奨励しています(欧州審査基準E部VII-10)。

 ・EPOへの移行時
 ・規則161(1)の応答時

2.手続的要件
・必要書面の提出
http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/232788473F01648FC125737E004ED2EC/$File/1005_form-edit_12_07.pdf
・庁費用はかかりません。

3.効果(Special edition No. 3 OJ EPO 2007)
・欧州調査報告書の作成前にPACE申請がされた場合は、なるべく早期に欧州調査報告書が作成される。
・PACE申請または審査開始から3ヶ月以内に1stOAを発行するよう努力してもらえる。
・2回目以降のOAも前OAのResponseが提出されてから3ヶ月以内に発行するよう努力してもらえる(但し、OAで指定された応答期限内に応答し、指摘された全ての点に応答した場合に限る)。
・PACE申請は公開されない。

このようにPACEはあくまで訓示規定であって、必ずしも審査の迅速化を約束するものではありません。PACE申請をしたにもかかわらず1年以上審査部からのリアクションがないといったケースもあり得ます。
確実にPACEによって審査手続きを加速したい場合は、PACE申請をした上で、現地代理人に「EPOに電話で審査を加速して欲しい旨を伝える」ことを指示することが効果的です。EPOに直接電話で伝えることで、審査が実際に加速される確率は格段に上がります。

ドイツ特許出願の出願経過情報は以下のドイツ特許庁のサイトから入手可能です。

http://register.dpma.de/DPMAregister/pat/einsteiger?lang=en

包袋内の情報は残念ながらオンラインでは入手できません2014年1月7日からドイツでも包袋内容をオンラインで入手できるようになりました。

日本の実務ではまず使われることはありませんが、欧州およびドイツの実務ではクレームカテゴリとしてuse(使用)がよく用いられます。

Useクレームは、具体的にどのような権利範囲を有するのでしょうか。
欧州特許庁での取り扱いと、ドイツ国内での取り扱いとに分けて説明します。

・欧州特許庁での取り扱い
 欧州においてはUseクレームと方法クレームとの権利範囲に差異はありません。
例えば、
 方法クレーム:化合物Xを使用して殺虫する方法 と
 Useクレーム:化合物Xの殺虫剤としての使用 と 
の権利範囲は同じとして取り扱われます。

・ドイツ国内での取り扱い
 一方ドイツの最高裁の判例(BGH GRUR 90,505)においては、Useクレームと方法クレームとの権利範囲は異なるとされています。より具体的には、ドイツにおいては、Useクレームの権利範囲は、「明白な準備(Sinnfällige Herrichtung)」まで拡張されます。ここで「明白な準備」とは、簡単に言えば「特許された使用を前提とする物の提供」を意味します。

例えば
 方法クレーム:化合物Xを使用して殺虫する方法 の権利範囲は、化合物Xを製造、販売する行為には及ばないのに対し、
 Useクレーム:化合物Xの殺虫剤としての使用 の権利範囲は、化合物Xを殺虫剤(パッケージや説明書等に殺虫剤として適していることを明示する)として準備、販売する行為まで及びます。

参考図書:欧州審査基準、Schulte

EPC規則137条(5)

補正クレームは,当初にクレームされていた発明又は単一の包括的発明概念を形成する一群の発明と関連していない未調査の主題を対象とすることができず,規則62a又は規則63に従って調査されていない主題を対象とすることもできない。


EPC規則137条(5)は、日本特許法17条の2第4項で規定するシフト補正の制限に対応する規定です。日本では導入当初から物議の的となっている規定ですが、EPOではどのように運用されているのでしょうか。

 

最近のEPO審判部の判決(T2334/11)では、規則137条(5)の適用について、以下のように説明されています。


“規則137条(5)は、クレームされた発明の本質または性質を、特に構成要素の置換えまたは削除によって大幅に変更する場合に適用されうる。....明確性、新規性または進歩性に関する拒絶理由を解消するために、出願当初の明細書に記載された構成要素をクレームに追加する補正は、通常、当初にクレームされていた発明との規則137(5)における単一性を損なわない。”

 

すなわち、特許請求の範囲を狭める補正であれば、通常は、EPOでシフト補正が問題視されることはありません。したがって、EPOにおいては、日本のシフト補正関連で問題となっているような、「審査された必須でない構成要件を削除することができない」といった弊害が生じることはないと思います。

この点でEPOにおけるシフト補正の運用は、JPOのそれよりも穏やかであると言えます。

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