徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

Grant rate

*特許査定率=特許査定件数/審査終了件数(特許査定件数+拒絶査定件数)

データ元:
DPMA Annual Reports


最近はありがたいことに色々な機関で欧州・ドイツ特許実務に関する講義で講師を勤めさせて頂く機会が増えました。私が講師を務める講義では受講者の方々にとって有益な時間を提供できるように以下の7点を心がけています。


1.受講者の知識レベルに合わせる

講義の内容は難しすぎても簡単すぎても受講者にとって有益ではありません。このため講義開始前に受講者の方々が講義のテーマについてどのぐらいの知識と経験を有しているかを質問してから講義を始め、受講者の方々の知識レベルに合致した内容を提供できるように努めています。


2.基本に重点をおく

私がまだ日本で働いていた時に何度か外国代理人からの最新の判例や法改正に関する講義を受けたことがありますが、そもそも現行の法律やガイドラインなど基本的な知識がなかったためさっぱり吸収できませんでした。このため講義のテーマとしては最新の判例や法改正よりも、現行の法律やガイドラインに基づいた基本事項をテーマとして取り扱うようにしています。


3.日本の実務との差異点を意識する

なんの土台もなく未知の情報に対峙するよりも、既知の情報を土台に共通点および相違点を確認していくほうが未知の情報を効率よく吸収できます。このため日本で欧州・ドイツの実務にについて講義する際には、受講者の方々がなじみ深い日本の実務との比較に重点を置きながら講義を進めるようにしています。


4.短く・少なく

人間の集中力および記憶力には限界があります。私個人の経験では90分以上の講義の情報は頭で処理しきれず結局物になりません。この理由から出来る限りスライド資料を少なくし、講義時間を短くするようにしています。


5.質疑応答は随時

日本の通常の講義スタイルでは講義の最後に質疑応答の時間がまとめて設けられます。しかしこのスタイルですと講義の途中に疑問が発生したとしても疑問が解消されないまま講義が進むので疑問が発生した後の講義の内容が全く頭に入らなかったという事態を招いてしまいます。このため出来る限り質疑応答をしながら講義を進めるというスタイルを採用しています。


6.自らの経験・見解を述べる

単に法律、判例そしてガイドラインなど公的に入手可能な情報を事務的に説明するだけでは講義が無味乾燥になりがちです。そこで講義では法律、判例そしてガイドラインを超えた私自身の経験・見解も述べるようにしています。自らの経験・見解を織り交ぜることで講義に情熱を込めることができます。


7.実務で使えるレベルまで落とし込む

私個人的には明日からでも直ぐに実務に活用できる知識を提供できて初めて受講者の方々に有益な講義を提供できたと言えると思っています。このため講義内容を単に抽象論で終わらせず、実務で活用できるレベルまで落とし込むことを心がけています。







欧州主要国における特許侵害行為に対する損害賠償請求権の消滅時効は以下の通りです。
Limitation period
*)フランスに関する情報はBandpay & Greuterの武内先生からご提供頂きました。



欧州では1つのカテゴリ(物、方法および使用)に2以上の独立クレームを含めることは原則禁止されています。この1カテゴリー1独立クレームの原則を規定するのが以下のEPC規則43条(2)です。

EPC規則 43条(2)          
第82条を損なうことなく、欧州特許出願は、同一カテゴリー(製品、方法、装置又は用途)に属する2以上の独立クレームを含むことができるが、出願の主題が次の項目の1に係わっている場合に限る。
(a) 相互に関連する複数の製品
(b) 製品又は装置の異なる用途
(c) 特定の問題についての代替的解決法。ただし、これらの代替的解決法を単一のクレームに包含させることが適切でない場合に限る。

このようにEPC規則43条(2)は上記(a)、(b)および(c)の場合、例外的に1つのカテゴリーに2以上の独立クレームを含めることが許されることを規定しています。そして欧州特許庁のガイドラインが上記(a)、(b)および(c)の要件を満たす具体例を開示しています(GL F‑IV, 3.2)。

欧州特許庁のガイドラインに開示された具体例は以下の通りです。

 ・EPC規則43条(2)(a)型
 ‐ プラグとソケット
 ‐ 受信機と送信機
 ‐ 化合物の中間体と最終化合物
 ‐ 遺伝子と遺伝子構築物とホストとタンパク質と薬剤
 
・EPC規則43条(2)(b)型
  ‐ 化合物の複数の用途

・EPC規則43条(2)(c)型
 ‐ 同一グループに属する複数の化合物
 ‐ そのような化合物を製造する複数の方法

・その他
 ‐ 回路とその回路を有する装置
 ‐ データ処理方法、そのデータ処理方法を行う手段を有する装置、そのデータ処理方法のプログラムが格納された情報媒体




ドイツ特許庁が単一性を指摘してくることはどちらかと言うと稀です。ドイツ特許庁の審査基準では単一性がないことが明らかな場合であっても課題の共通性がある場合などは単一性の指摘を避けるべき旨が規定されています(Richtlinien für die Prüfung von Patentanmeldungen 1.7)。このため普段の実務でドイツ特許庁からの単一性の指摘に触れることはあまりありません。

しかし一旦ドイツ特許庁から単一性を指摘するOAが発行された場合は注意が必要です。なぜなら単一性の指摘を解消する手段が限られているからです。

より具体的にはドイツ特許庁からのOAで単一性が指摘された場合、それを解消する手段は原則以下の2つしかありません(Richtlinien für die Prüfung von Patentanmeldungen 2.3.3.4)。

 1.単一性がない部分を放棄する
 2.単一性がない部分を分離(Ausscheidung)する

ここで「分離(Ausscheidung)」とは単一性を指摘するOAで指定された期間内に義務的に行う分割を意味し、出願係属時にいつでも行うことができる自発的分割(Teilung)とは別の名称が用いられています。

つまり欧州特許庁のように補正によって単一性を確保したり、意見書によって単一性があることを主張したりすることで単一性の指摘を解消することはできません(過去の記事「部分ESRの対応とその後のシナリオ」を参照)。

さらに注意すべきはOAで指定された期間内にその単一性がない部分を分離(Ausscheidung)しなかった場合、その部分を放棄したとみなされ以後の手続きでその部分を復活させることができません。自発的分割(Teilung)の対象とすることもできません。つまり分離(Ausscheidung)しなかった部分の権利化は不可能となります。

従って、単一性が無い部分の権利化を希望する可能性がある場合は、OAで指定された期間内にその部分を分離(Ausscheidung)しておくことをお勧めします。


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