徒然なるままに欧州特許実務

ドイツで働く日本人弁理士が、欧州における特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

昨年に引き続き今年も7月中旬~9月中旬まで日本に滞在しながらリモートワークをしています。リモートワークも二度目となってくると物理的に会社に勤務するオフィスワークと比較してどのようなデメリットがあるか、そしてそのデメリットを補うにはどのようなスキルが必要になってくるかがなんとなくつかめてきました。

以下に私の経験上リモートワークに必要だと思った6つのスキルを紹介します。


1.実務能力

リモートワークでは上司・同僚とは離れて仕事を進めなければならないため、当然ながら上司・同僚からのサポートが受けにくいです。

このため同僚に相談しなければ進められない仕事や上司の指導を受けなければ進められない仕事はリモートワークには向きません。したがってリモートワークを行う上での前提として一人で仕事を完結することができる実務能力が最低限必要になります。


2.文章力

上述のようにリモートワークでは単独で完結することができる仕事がメインになりますが、組織に属している以上、上司・同僚への連絡事項、相談事項は必ず発生します。

この点オフィスワークでは、上司・同僚に相談をすることは簡単です。上司・同僚が時間がありそうなタイミングで話しかけ口頭で相談事項を伝えればよいからです。

しかしリモートワークの場合は、上司・同僚が時間がありそうなタイミングを推し量ることができません。相手の都合が読めない場合、電話は相手に負担となる恐れがあるため効率的なコミュニケーションツールにはなりません。このためリモートワークでは相談事項を口頭ではなく文章で伝える必要があります。

そこで求められるのが口頭に頼らずとも、相談事項を過不足なく伝え、そして相手にどのようなフィードバックを望んでいるかを簡潔にまとめることができる文章力です。

この文章力がなければスムーズに上司・同僚と連携して仕事を進めることができません。


3.即応力

リモートワークは上述のように上司・同僚との相談が難しいです。これは離れて働く上司・同僚にとってもストレスになります。物理的に距離があること自体でストレスになっているにも関わらず、メールをしても返信がない、電話にも出ないという連絡を取りずらい状況を作ってしまうと「もう長谷川にリモートワークをさせるな」という事態を招きかねません。

このため上司・同僚にできるだけストレスをかけぬよう、メールには素早く反応し、電話には原則いつでも出られるようにしておくことが好ましいです。


4.情報共有スキル

オフィスワークでは思った以上に他人とコミュニケーションを取ってます。廊下でのすれ違い、カフェテリアで合った際、ランチを一緒にした際など偶然に情報交換をする機会が豊富にあるからです。そしてこのような機会に交換した情報が仕事に重要になってくることがあります。

一方でリモートワークでは、このような偶然に情報交換をする機会が一切ありません。このため意識して積極的に情報交換の機会を作らなければ、必要な情報が入ってこなかったり、仕事で重要な情報を伝えそこなったりします。


5.ITスキル


リモートワークはITによるサポートが無ければなかなか効率的に働くことができません。例えばクラウドやテレビ会議システムの知識があるか否かでリモートワークの効率がかなり変わってきます。

またPC上でトラブルが生じた場合であっても直ぐに会社のSEによるサポートは受けられません。したがって自らトラブルを解消することが求められることがあります。

このように新たなアプリを試したり、トラブルシューティングで色々と試行錯誤をできるよう少なくともITに対してオープンであることが必要です。


6.自己管理能力


リモートワーク中は他人の目がありません。このため自己を律することが出来ないと、だらだら仕事をしてしまうリスクがります。実際に私もホテルなどでリモートワークする場合は油断するとユーチューブ廃人になってしまい、効率的に仕事ができない場合があります。

一方でリモートワークではいったん仕事にはまってしまうと邪魔が入らない分働き過ぎてしまうというリスクもあります。

このため適度な業務効率を維持するために自己管理能力が必要になります。


まとめ

上記6つのスキルのうち、「1.実務能力」、「5.ITスキル」そして「6.自己管理能力」が重要であることはリモートワークをする前から予測していましたが、「2.文章力」そして「3.即応力」そして「4.情報共有スキル」などのコミュニケーションスキルが思った以上に重要であることはリモートワークをしてから実感しました。そしてこの「2.文章力」そして「3.即応力」そして「4.情報共有スキル」の3つのコミュニケーションスキルのうち「2.文章力」はトレーニングをしなければなかなか向上しません。

したがってこれからリモートワークをすることは検討されている方は積極的に文章力を鍛えることをお勧めします。


ドイツではプロダクトバイプロセスクレーム(以下PbPクレーム)の解釈に審査時も侵害判断時も物同一説を採用します。今回はこの物同一説の考えがよく表れた侵害事件におけるドイツ最高裁(BGH)の判決(事件名:Kochgefäß、ケース番号:X ZR 81/13)を紹介します。


1. クレーム1

 M1: 被覆底部(18)を有する調理鍋(10)であって、
 M2: その被覆底部の保護被覆(22)の周壁(26)に、隆起部(28、30)および/あるいは陥没部(32、34)が形成され、
 M3: 前記隆起部(28、30)および/あるいは前記陥没部(32、34)は、前記被覆底部(18)を製造するために使用される成形型に対応した凹陥部および/あるいは突出部を設けることで得られる、調理鍋(10)。
PbP
2. 明細書:

被覆底部を製造するために使用される成形型に対応した凹陥部および/あるいは突出部を設けることによる技術的効果に関する記載はない。


3. 論点:

M3の製造方法的特徴はクレーム1の発明を何らかの形で限定するか?


4. ドイツ最高裁の当該製造方法に関する特徴の解釈:

M3の製造方法的特徴はクレーム1の発明を限定しない。


5.判決文の抜粋:

このプロダクトバイプロセスクレームとしての表現は単に特許製品を記述するものであって、実際にM3において記載された方法によって製造された製品を限定するものではない。
Diese Formulierung des Anspruchs als product-by-process-Anspruch dient allein der Kennzeichnung des patentgemäßen Erzeugnisses und bringt keine Beschränkung auf Erzeugnisse zum Ausdruck, die tatsächlich mittels der in Merkmal 3 geschilderten Vorgehensweise hergestellt worden sind.

例え対象特許の明細書を考慮してクレームを解釈したとしても、保護対象をクレームの記述中に用いられた方法ステップに限定すべき示唆はない。
Auch aus der gebotenen Auslegung des Patentanspruchs unter Berücksichtigung der Beschreibung des Klagepatents ergeben sich keine Hinweise auf eine Beschränkung des geschützten Gegenstands durch den zu seiner Kennzeichnung herangezogenen Verfahrensweg.


2019年10月の私長谷川の日本での出没予報(仮)です。

10月7日(月) 徳島/研修講師
10月8日(火) 愛知/クライアント訪問
10月9日(水) 大阪/クライアント訪問
10月10日(木) 愛知・東京/クライアント訪問
10月11日(金) 東京/クライアント訪問・研修講師

打ち合わせの日程等にご参照下さい。


この度、日・米・欧の3事務所による合同主催のセミナーで私長谷川が講師を務めさせて頂くことになりました。 セミナーの案内は以下の通りです。
Seminar
受講者の方々にとって有意義な情報および時間を提供できるよう努めますよろしくお願いいたします。
皆様どうぞ奮ってご参加下さい。


欧州特許出願のOA対応でクレーム1は補正せず、新たな従属クレームを追加する補正の指示を受けることがあります。これは補正無しのクレーム1の特許性が認められなかった際には新たに追加した従属クレームの審査してもらうことを期待した指示だと思われます。しかしながらほとんどの場合その期待は裏切られることになります。

そもそも欧州特許庁のガイドラインは出願時(調査段階前)にある従属クレームの特許性を審査することを明確に審査官に義務付けていますが(GL B-III, 3.7)、出願後に例えば拡張欧州調査報告(EESR)に対する応答の際に追加された新たな従属クレームの特許性を審査する義務はガイドラインに明示されていません。

したがってほとんどの場合、審査官はクレーム1の特許性が認められないと判断した際には、新たに追加された従属クレームの審査することなく新規のOAを発行します。

このため欧州特許庁におけるOA対応で新たな従属クレームを追加する補正はあまり効果的ではありません。

どうしても「クレーム1は補正したくない、けれどもクレーム1の特許性が認められなかったときは追加の特徴も審査してほしい」という場合は、補正無しのクレームを主請求(Main Request)とし、補正いより特徴をクレーム1に追加したものを補請求(Auxiliary Request)とすることをお勧めします。

補請求の審査の義務はガイドラインに明示されていますので(GL E-X, 2.9)、補正無しの主請求の特許性が認められなかった際には、補正により特徴が追加された補請求が確実に審査されることになります。





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